鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

仕事の手柄はすべて部下のもの

[要旨]

立命館大学ビジネススクール教授の山本真司さんは、マネージャーは、手柄は部下に与え、失敗の責任は自分が負わなければならないとおっしゃっておられます。山本さん自身も、かつて、自分が作り上げた仕事を、丸ごと、ある上司に取られたことがあり、その瞬間にやる気を失って、その組織に対する忠誠心も信頼もぶっ飛んでしまったことがあるので、組織活動に悪い影響を与えてしまうということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、立命館大学ビジネススクール教授の山本真司さんのご著書、「忙しすぎるリーダーの9割が知らないチームを動かすすごい仕組み」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、山本さんは、マネージャーは、まず、チームの活動が顧客にどのように貢献しているのかを明確にし、それに関するチーム(マネージャー)の目標を宣言することにより、活動のベクトルや着地点が明確になり、より研ぎ澄まされた活動ができるようになるということについて説明しました。

これに続いて、山本さんは、仕事の手柄は部下に渡すべきということについて述べておられます。「仕事がうまくいった時、マネジャーであるあなたが『勲章』をもらえることがしばしばあると思います。顧客から褒められる、会社から評価される、華々しい成功がマスコ三に取り上げられる、などということもあります。

確かにそれは、頑張ったマネジャーに対する勲章なのかもしれません。マネジャーとしてチームメンバーの能力を120%、150%まで引き出したことにより、達成できたことかもしれません。それでも、勲章はメンバーにあげましょう。顧客から褒められたら『これはメンバーがやったことですので、ぜひ褒めてあげてくだざい』と伝える。会社からの表彰はメンバーに受け取ってもらうようにする。

マスコミからの取材も、現場を一番知るメンバーに対応してもらう。私の『仕組み』仕事術では、仕事というポールは常にメンバーの手元にあります。そのポールを持っている任された人こそが褒められ、評価されるベきなのです。正直に告白すれば、私もメンバーの業績を、さも自分の手柄のように吹聴してしまったことが何度もあります。しかし、すぐに後味の悪さに後悔することになりました。

この感覚は結構キツく、すぐに『手柄をメンバーに渡せばよかった』と思ったものです。さらに、手柄を横取りしたことが誰かにバレるのではないかと不安になりもしました。そして実際に、『お天道様は、見ている』ではないですが、メンパーの手柄を横取りしたことは、本当にすぐにパレてしまうものです。こうなるとメンバーは仕事が馬鹿らしくなり、やる気を失ってしまいます。結局、損をするのは自分です。

もう時効でしょうが、私も、自分が頑張って作り上げた仕事を丸ごと、ある上司に取られたことがあります。その瞬間にやる気を失って、その組織に対する忠誠心も信頼もぶっ飛んでしまったという怒りの記憶があります。やはり『勲章はメンバーに』と考えることが重要なのです。一方、マネジャーたるもの、失敗はすベて自分の責任だと思うベきでず。

『任せて任せず』がマネジャーの基本的な姿勢ですが、ここでは『任せず』というリスク管理に失敗したわけです。つまり、『褒められた時は、メンバーのおかげ』、『叱られたら、自分の責任』と思って行動すれば良いのです。もちろん、失敗をすベてしょい込むことで一時的にプライドが大いに傷つくかもしれません。しかし、その代わりに非常にすがすがしいマインドと、メンバーの信頼という素晴らしい成果を手に入れることができます」(258ページ)

部下の手柄を上司が奪ってはいけないということは、ほとんどの方が理解しておられると思います。しかし、冷静に考えれば、事業活動は組織活動なので、業績が向上したときは、それは個人の手柄ではなく、組織の手柄ということになります。確かに、あるメンバーが大口受注をとったり、ヒット商品を開発したりするということはあります。そのようなとき、業績が高まったことに対するそのメンバーの貢献度が高いことに間違いはありません。

しかし、大口受注もヒット商品開発も、他にメンバーがいなければ、結実しません。したがって、最終的には組織の手柄と考えるべきでしょう。でも、どんな人にも功名心があります。そこで、「このヒット商品は自分が開発した」と、他の人に触れ回りたいという気持ちになります。事情を分かっている人に対してそのようなことを言うことは問題はないかもしれませんが、あまり事情を分かっていない人に、あたかも自分ひとりの手柄のように触れ回ると、同僚から不満を持たれる原因になります。

特に、マネージャーがそのようなことをしてしまうと、部下は受動的にしか活動しなくなり、組織はトップダウン型になってしまいます。山本さんの本のテーマはフラット型組織をつくり、それを活用することですし、現在の経営環境はフラット型組織が適しているわけですから、マネージャーや経営者が手柄を独り占めしようとすることは、業績を下げてしまうことにつながるということに注意が必要でしょう。

最後に、本日、配信された、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さん(故人)のメールマガジンに書かれていたことをご紹介したいと思います。「売上や会社の規模ばかりを声高に自慢する経営者がいます。そういう経営者が、自社で働く社員について熱く語る姿を見たことがありません。高収益だけを追い求めているあまり、社風が荒み、社員の人間性と精神性が劣ってくるからです。社員を語れない経営者は、自己顕示欲だけが強い人。社員を語り、社員を誇りにできてこその経営者です」

2026/5/30 No.3454