鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

組織人格と個人人格

[要旨]

組織の参加者は、各々の価値観を持っているので、組織活動をする際には、組織としての価値観を調整する必要があります。このとき、自分の価値観を別の価値観に変えるのではなく、組織の参加者として、別の人格を持っていると考えると、調整が円滑になります。


[本文]

先日、マーケティングコンサルタントの平野友朗さんが、価値観に関する平野さんのお考えを、メールマガジンに書いておられました。メールマガジンの要旨は、例えば、たくさんの顧客に書類を送付するとき、封筒への宛名ラベル貼りや、資料の封入などの作業をすることになるが、その作業に関し、平野さんは効率や合理性を重視する。でも、会社の中には、丁寧さや思いやりを重視人もいるので、そのような人に対しては、平野さんは違和感を感じる。そこで、相手の価値観を大切にした上で、折り合いをつけていくことが大切だ、というものです。

私も平野さんと同じ考えなのですが、この平野さんのメールマガジンを読んで、組織論研究の第一人者のバーナードが述べていた、「組織人格」という考え方を思い出しました。バーナードは、主著、「経営者の役割」の中で、「組織のすべての参加者は、二重人格-組織人格と個人人格-をもつものとみなされる」(91ページ)と指摘しています。

例えば、家庭では温厚な父親でも、会社に行けば、仕事の鬼になるような人もいると思いますが、会社組織の一員としての人格と、そこから離れたときの人格は異なるということは容易に理解できると思います。前述の資料送付の例で言えば、職場では資料を送るとき、何を重視するか、例えば効率性を重視すると組織として決めれば、従業員の方たちは、丁寧さを重視する価値観を持っている人であっても、個人的な価値観とは別の価値観で行動することになるということです。

とはいえ、それは、個人人格の否定ではなく、組織の参加者として行動するときは、組織人格という別の人格を持って行動しているので、個人人格が否定されないですむということになります。組織は、価値観の違う人が集まるわけですので、価値観の調整は必要ですが、そのことを、他の人に譲ると考えずに、別の人格を持つことであると考えると、価値観の調整が円滑になるのではないかと思います。

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