鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成長を追求すると会社は利益を得る

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、個人と組織(会社)で利益相反が起きるときがありますが、それが起きないようにするには、従業員の方が成長するというメリットを追求すると、会社は利益を得られるようになり、利益相反は起きないようになるということです。しかし、「組織のために個人が犠牲になることはおかしい」という誤解をする人が現れますが、そのような方は、単独で活動するより、組織で活動することの方が効率が高いというところに着目すべきであるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、そもそも、人間が集団をつくる理由は、集団でものごとを成した方が得られる成果が大きくなるからだということだそうですが、現在は、将来の不確定要素があまりにも多すぎて、組織での成長を信じられなくなっており、日本中、全員が迷いながら仕事をしているということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、個人と組織が利益相反を起こさないようにするにはどうすればよいのかということについて述べておられます。「初めてリーダーになるタイミングは、初めて組織のことを考えるタイミングです。それは、『自分の利益』以外のことを考えるということです。いいリーター、ダメなリーターの分岐点は、ここでの考え方で決まります。1人の部下に好かれるかどうかではなく、チーム全体のパフォーマンスに視点を置いているかどうか。そう考えると、『社員のモチベーションを上げよう』、『感情的なつながりを強くしよう』という方法が間違っていることに気づけるはずです。

たとえ部下の人数が2~3人であったとしても、組織のトップに立つことには変わりありません。そこで考えるベきことは、『会社の利益のために働く』ためには何をすベきかということです。たとえば、経営者たちが気づいていない情報は、積極的に上にあげるベきです。『他社から新しいサービスが出て、顧客が奪われています』、『今の業務量では、どうしても1日3時間以上の残業が必要です』など、会社のためになる情報を提供していくことが求められます。

しかし、『組織の利益』を考えないリーダーは、次のような言動をします。『うちのサービスは全然よくないよな、他社はあんなに素晴らしいのに』、『最近、残業が多すぎるよな、本当にダメな会社だよな』、このような発言をして、部下たちから人気をとろうとしてしまうのです。リーダーの考え方次第で、『組織の利益』を増やす機会が失われてしまいます。だからこそ、リーダーはまず『組織の利益』を考え、自らの言動を正していくベきなのです。本書が対象としているリーダーは、『葛藤』を抱えることがあると思います。

現場の部下のことを考える一方、上から数字の目標を言い渡される中間管理發だからです。そこで板挟みになってしまい、消耗していくリーダーが後を絶ちませル。そんなときに考えてもらいたいのが、次の自問自答です。『これって、利益相反を起こしていないか?』、つまり、個人と会社が『利益相反』を起こしていないかどうかだけを見るのです。個人が追求することで会社が利益を得るもの。それは、『成長』しかありません。個人が成長という『利益』を得ることができるのは、会社の成長に貢献できているからです。

『成長』という利益を追い求める限り、会社と利益相反を起こさず、永遠に利益を得続けることが可能です。一方、『仲間と楽しく働きたい』、『充実した福利厚生がほしい』なとの部下が求める利益は、ときに、会社と利益相反を起こします。会社と利益相反を起こす利益を与え続けることは不可能です。そんなときこそ、『利益相反を起こしていないか?』を自らに問うてみるのです。仮面の内側で自分に聞いてみる。すると、いま、やるベきことがプレないはずです。さて、ここまで、『組織の利益』について述ベてきました。

この話は、ヘタをすると大きな誤解を生みます。『個人を蔑(ないがし)ろにしている!』、『そうやって組織が個人を潰していくんだ!』、などと拒否反応を示されるおそれがあります。だからこそ、マンモスの例を用い個人と組織の関係について丁寧に説明してきました。『組織のために個人をなくせ』とは言っていません。『組織のために働いたことが、個人の利益につながっていく』だけです。その『切っても切れない関係性』について解説したつもりです」(160ページ)

話を分かりやすくするために、ここでは、「組織=会社」という前提で話を進めますが、会社と個人の関係は難しいと、私も考えています。それは、働くことへの価値観が、人によって異なるからです。(ここでは、健康な成人の方を前提に話をすすめます。また、フリーランスの方であっても、受注相手の多くが会社であることから、会社員と近い立場にあるという前提でで話を進めます)働くことにあまり抵抗がない人にとっては、安藤さんが述べておられるように、働くことで自分も成長し、給料ももらえるわけですから、会社はとてもよいしくみです。

でも、働くことが嫌いな人にとっては、できるだけ働きたくないわけですから、生活できるだけの最低限の給料だけもらえれば、それ以上、働きたくないし、なるべく会社にいる時間は減らしたいと考えるでしょう。ですから、働く場所である会社がよいところと言い切ることは難しいと、私は考えています。(働くことは嫌ではないけれど、労働環境が悪くて、その会社が嫌いという場合もあると思いますが、ここでは、労働環境の問題はないという前提で話を進めます)

とはいえ、働くことが嫌な人が、本当に働くことが嫌なら、自給自足をするという選択もあります。でも、恐らく、自給自足をする人はいないでしょう。なぜなら、自給自足する労力よりも、最低限の給料をもらう労働の方が少ないからです。そう考えれば、会社で働くことは、ほとんどの人にとってメリットがあると言えます。そして、これ以上、この話を進めると、道徳的な価値観に移らなければならないので、この記事ではここまでとしたいと思います。

でも、人間は社会的な動物なので、必ず何らかの組織に属さなければならず、組織とどう折り合いをつけるかという問題から逃れることはできません。したがって、どうやって組織と深く関わらずにすむかを考えるよりも、どうやって組織とうまく関わるかを考えて組織と関わる方が、個人の利益も大きくなると思います。また、言及するまでもありませんが、会社経営者の方も、従業員の方が働きたい会社となる会社にすることが、自社の業績を高めるための効果の高い方法であると言えます。

2025/7/6 No.3126