鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

株主を軽視する日本の会社の風土

[要旨]

2020年7月に開かれた、東芝株主総会は、公正に運営されなかったという報告が行われました。しかし、日本では、経営者が株主を軽視する行為が行われても、関心を持つ人が少なく、それを防ぐ制度が整備されても、それを無視する事例が繰り返されてきました。


[本文]

先日、東芝の第三者委員会が、「2020年7月に開かれた株主総会は、公正に運営されたものとはいえない」といという内容の報告書を公表しました。報告書では、東芝経済産業省を通して、株主に圧力をかけたと指摘していいます。これについては、経済産業省は事実かどうかを明確にしていませんが、東芝の役員側は、その事実を認めているようです。

ところで、今回、東芝の報告書について取り上げたのは、再び、会社役員によって、株主を軽視する行為が行われたことに落胆したからです。今回の東芝の件では、経済産業省に株主対応の相談をしたのは、監査委員(東芝は指名委員会等設置会社なので、監査委員は、従来からある機関設計の監査役会設置会社監査役に相当します)の社外取締役であり、本来なら、他の取締役の業務執行を監督する役割が大きく期待されている立場の人が、重大な違反をしているようです。

ところが、今後、同社に関する報道の多くは、東芝が政治家を通じて経済産業省が株主に圧力をかけさせたというところが、大部分を占めるのではないかと、私は想像しています。そのことも問題なのですが、株主を軽視しているという点については、一般の人や、報道機関は、あまり関心がないようです。

というのも、経営者は会社の方針を決める権限を持っているとだけ考えてしまっている人が多いからだと思います。そこで、株主を軽視しているということについては、あまり報道もされないのでしょう。確かに、経営者(取締役)は、会社の方針を決める役割がありますが、それは、株主の委任に基づくものであって、株主の意思に外れることをすれば、最悪の場合、会社法に定める特別背任罪に問われます。

現在は、会社法での内部統制に関する規定、東京証券取引所によるコーポレートガバナンスコードの制定など、制度面での不祥事発生を回避する対策は明確になっていますが、今回の東芝の例のように、それが安易に無視されてしまえば、それらの制度整備は何の役にも立ちません。これからは、一般の人たちが、法令を破った会社に対し、もっと関心をもって強い批判を行わなければ、また、別の会社で、同様のことが起きても不思議ではないと、私は考えています。

f:id:rokkakuakio:20210614170931j:plain