鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

約束手形の廃止の影響

[要旨]

経済産業省は、約束手形の廃止の方針を打ち出しましたが、これは、従来の商慣行を変え、売上代金の現金化までの期間を短縮しようとする動きの端緒となるものです。したがって、現在、約束手形を発行している会社は、資金繰に影響が出ないよう、準備をしていくことが大切です。


[本文]

以前から議論されてきてはいましたが、2月19日に、経済産業省約束手形の廃止の方針を明確にしたようです。(ご参考→ https://bit.ly/3pZUYDA経済産業省約束手形を廃止しようとする背景は、約束手形を利用した決済のコストや事務負担を減らそうとする面もありますが、下請会社の売上金回収を容易にしようという面が強いようです。

そのような面では、これまで、売上代金として、大企業から約束手形を受け取ってきた中小企業にとっては、歓迎する方針でしょう。ただ、約束手形は廃止されたとしても、それに代わって電子記録債権で支払いを受けるようになるだけでは、資金繰の面では、これまでと変わらないことになります。そこで、経済産業省は、従来の商慣行も変えて行くことを検討しているようですが、それが変わることになるとしても、時間を要することになるでしょう。

したがって、現在、約束手形を受け取っている会社は、約束手形が廃止になったとしても、資金繰の面では、当面は変化はないと考えることが妥当と言えます。一方、中小企業であっても、元請会社として、下請会社に約束手形を発行している会社も少なくないでしょう。そのような会社は、約束手形が廃止されれば、当面は、約束手形に代わる、電子記録債権で支払いができるように準備をしておくことが求められるでしょう。

また、将来的には、電子記録債権の利用を含めて、商慣行を変えるよう、経済産業省からの要請が来ることが考えられます。それに備えて、支払債務の減少分を、銀行からの融資などで補えるよう、早い段階から準備をしておくことが妥当でしょう。このような決済手段の変更は、中小企業にとって負担が増えると感じられる面もありますが、業界全体として取引の健全化を進めるという面もあり、基本的には前向きな対応として捉えることが大切だと、私は考えています。

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