あらためて述べるまでもなく、会社にとっ
て資金は血液のようなもので、資金が不足
すると事業を運営できなくなることから、
経営者の方は資金調達に常に注意を払って
いると思います。
この資金繰は、短期的なものと長期的なも
のがあります。
短期的なものは、いわゆるキャッシュフ
ロー(CF、現金・預金残高)の確保で、
このことは一般的に言われている資金繰の
ことです。
長期的なものは、利益の確保です。
利益は会社のストック(いわゆる内部留
保)になるので、その分、銀行など外部か
らの資金調達を減らすことができます。
また、詳細な説明は割愛しますが、利益が
少ない、または、赤字の会社は信用力が小
さくなるので、前述の短期的な資金繰を維
持することがより困難になります。
資金繰というと、1か月後、1週間後、明
日などの支払い資金をどうするかというこ
とにばかり目が行きがちですが、そもそも
利益を得ていなければ、この短期的な資金
繰も維持できません。
ただ、財務分析ではCFは流動性分析とし
て、利益は収益性分析として行われている
ので、両社は別のものと考えている人が多
いのかもしれません。
そこで、私は、CFは短期的な財務目標、
利益は長期的な財務目標と説明することも
あります。
この両者は、どちらかだけが達成されれば
よいということではなく、どちらも達成で
きなければ、会社の事業は維持できないも
のと認識することが必要です。
ところで、ここまでは多くの方が理解され
るのですが、実際には、短期的な資金繰に
ばかり気をとられている経営者の方が少な
くないと感じています。
というのは、例えば、月末に仕入れ代金の
支払日が来るが、資金が足りないというこ
とで銀行に融資を申し込み、承認が得られ
れば安心してしてしまう、すなわち、毎月
の支払日を乗り切れさえすればよいと考え
ている方が多いのではないでしょうか?
もちろん、CF、すなわち短期的な財務目
標を達成することができれは、短期間は事
業が継続できますが、前述の通り、利益の
確保、すなわち長期的な財務目標を達成で
きなければ、会社の信用は低下し、早晩、
事業は行き詰ってしまいます。
話がそれますが、長期的な財務目標の達成
を目指していない経営者の方は、自社の信
用力が下がってきたときに、銀行は冷たい
と感じたり、そのために融資対策もしなけ
ればならないと考えてしまうのではないで
しょうか?
話をもどして、なぜ短期的な財務目標だけ
に目が向いてしまう経営者が多いのかとい
う理由については、次のようなことが考え
られると思います。
ひとつは、前述のように、CFと利益は密
接な関係があるのですが、そのことを理解
せず、CFだけに目を向けてしまうからだ
と思います。
ふたつめは、利益が得られなくても必ずし
も直ちに倒産するとは限りませんが、CF
はそれが底を尽きると直ちに倒産してしま
うため、利益についてはCFと比べて後回
しにされがちなのでしょう。
そしてみっつめは、利益確保、すなわち対
顧客(市場)への働きかけこそ、会社の課
題として最も難しいからではないでしょう
か?
銀行から融資を受けるための折衝も決して
容易ではありませんが、それでも、銀行は
融資先を支援するという使命を担う立場で
もあることから、融資を申し込む側に寄り
添うこともあります。
一方、顧客の獲得は、競争が激しい経営環
境の中にあっては、会社にとって最も難し
い課題です。
そこで、事業の継続という側面から見れ
ば、資金繰が苦しい会社は、顧客への働き
かけよりも、銀行を頼ってしまうという傾
向が強くなるのではないでしょうか?
今回の結論は、資金繰は銀行だけへの働き
かけ、すなわち融資を得るだけでは解決し
ないため、あわせて、利益の確保という根
源的な課題にも目を向けなければならない
ということです。
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