鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

見栄をコントロールする

吉田潤喜さんのご著書、「『人儲け』でき

ない人生ほどつまらないものはない!」

( https://amzn.to/2kbffqc )を読みまし

た。


吉田さんは、京都市で生まれ、高校卒業後

に渡米し、空手教室を開いた後、あること

がきっかけでヨシダソースを製造販売する

事業を始め、現在は、18のグループ会社

を率いています。


吉田さんのご著書は、吉田さんの経験した

り見てきたい、くつものエピソードを通し

て、人に好かれることで事業を伸ばすこと

の大切さが述べられています。


そのエピソードはどれも参考になることば

かりですが、最も印象に残ったものは、見

栄をコントロールしなければならないとい

うものです。


吉田さんは、かつて、取引先の会社のCF

O(最高財務責任者)を務めていたマット

氏と知り合いになり、人がらもよいことか

ら、ゴルフを一緒にプレーするなど親交を

深めていました。


その後、その会社の社長が交代したとこ

ろ、マットは社長と反りが合わず、会社を

辞めたいと考えていたそうです。


そこで、吉田さんはマットをスカウトし、

自社で働いてもらうことにしたそうです。


その際、条件として、報酬は現在より下が

ること、肩書は与えられないことを提示し

たのですが、それを受け入れてくれたそう

です。


それにも関わらず、マットは吉田さんの会

社で誠実に働き、かつ、他の従業員にも慕

われたことから、副社長を経て、グループ

会社18社をまとめる社長に据えたそうで

す。


そのような活躍をしていたマットに対し、

吉田さんは飛行機に乗るときにファースト

クラスを使ったり、また、秘書を使うこと

も薦めたそうですが、マットはいずれも使

わなわなかったそうです。


それどころか、マットは、自分の手柄を吹

聴したり、昇進するための画策をすること

もしなかったそうです。


それは、マットは見栄をコントロールして

いたからであり、だからこそ会社への貢献

も大きかったということでした。


その後、マットは若くして癌で亡くなって

しまいましたが、吉田さんはマットと出

会ってから、マットのように見栄を張らな

い人物を評価するようになったそうです。


吉田さんによれば、見栄を張る人は人間関

係を悪くし、会社の業績も下げると考えて

いるそうです。


例えば、自分をよく見せたいと思う上司

は、自分に対しておべっかを使う人ばかり

を評価するするようになり、本当に能力が

高く、会社にとって必要な人材を評価しな

くなる可能性が高くなります。


さらに、自分におべっかばかりを使う人を

集めると、自分の立場を勘違いして部下を

ぞんざいに扱うようになり、ますます部下

の士気を下げてしまいます。


ここまでは、見栄を張るなど、虚栄心を持

つことを戒めることを述べてきたため、特

に真新しさを感じないかもしれません。


しかし、吉田さんは、日本では会社が従業

員にお金を払ってやっているという雰囲気

が蔓延している。


従業員が会社からお金をもらえるのは、上

司のおかげでも会社のおかげでもなく、従

業員自身が働いているからだ。


間違っても、上司が部下に「おまえは誰の

お陰でメシが食えると思っているのだ」と

言ってはいけないと、書いています。


私の経験では、少数ながら従業員には自社

で働いてもらっていると感謝している経営

者の方がいることは知っていますが、多く

の場合、社長が従業員を食わせていると考

えている場合が多いようです。


そして、そのような経営者を悪いお手本と

して、自分も社長のように威張りたいから

という理由で、自ら会社を作って社長にな

り、雇った従業員に対して威張ってしまう

という悪循環を見ることもあります。


この見栄を張るということは、まず、道徳

的によくないことなのですが、吉田さんは

人に好かれることで事業を発展させてきま

した。


そこで、事業を発展させるためには、社長

が見栄をコントロールし、人から好かれる

ようにならなければならないと述べていま

す。


それが吉田さんのいう、「人儲け」です。


このような観点から、見栄をコントロール

することの大切さを吉田さんの本を読んで

感じました。


もう一歩踏み込んで述べると、経営者は会

社の事業を発展させることを最も優先すべ

きであるにもかかわらず、経営者自身も気

づかないうちに、自分の虚栄心を満たすこ

とを目的にしてしまっている例を見ること

が少なくありません。


繰り返しになりますが、見栄を張ることは

道徳的によくないことですが、それだけで

なく、経営者の行動の第一の目的が会社の

ことではなく、自分のことであれば、会社

はよくなることはありません。

 

 

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