鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

お父さんはかっこいいドリルを欲しい

[要旨]

米国の経済学者のレビットは、「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく、『穴』(ベネフィット)である」という有名な言葉を残していますが、岩田松雄さんによれば、現在は、「イケてるお父さん像」を求めているということです。このように、的確なベネフィットを探るために、STP分析を行うことが必要であり、経営者はその実践に注力する役割が求められています。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、E-コマースで仮説→検証→修正のサイクルを高速で回した結果、岩田さんは、ザ・ボディショップのE-コマースの販売額を、社長就任時の3,000万円から、その10倍の3億円に増加させたということをご説明しました。

これに続いて、岩田さんは、STP分析の重要性についてご説明しておられます。「ドラッカーの本の中に、こんな有名な話があります。いわゆるDIYショップで、壁に何かを取り付けたいお客様は、何を求めて来ているのか?答えは、ドリルではなく、穴。でも、『新しい経営学』(三谷宏治著)によると、DIYショップに来ているお父さんが求めているのは、普通のドリルではなくて、穴でもなくて、『かっこいいドリル』なのです。お父さんの求めている価値は、カッコイイお父さんなのです。

息子たちの前で、カッコイイドリルを使いこなしている、イケてるお父さんお父さん像を求めているのです。ですから、ほとんど使わない機能(ボタン)満載のドリルが売れるのです。お客様が求める価値は何か?スターバックスでは、おいしいコーヒー、くつろぎの空間、店員さんの笑顔です。他のコーヒーショップでは、たばこが吸える、とりあえず座りたい、食事をしたいなど、お客様の求める価値が違います。

そのすべてに応えることはできません。マーケティングの基本であるセグメンテーションを明確化して、その中で自社の強み(ポジショニング)を活かせるターゲットにフォーカスしなければなりません。これがいわゆるSTPの考え方です。こういったマーケティングの基本から、きちんと考えることが、とても大切です」(145ページ)

スターバックスは、サードブレイスを提供しようとしていることが強みになっていることは有名です。すなわち、スターバックスに来店する顧客は、単なるコーヒーではなく、「おいしいコーヒー、くつろぎの空間、店員さんの笑顔」を求めに来ているわけです。そして、DIYにドリルを買いに来る人は、イケてるお父さん像を求めに来ています。しかし、こういったSTP分析の活用は、一朝一夕に奏功しません。

だからこそ、テストマーケティングによるPDCAを高速で回すことが重要です。さらに、PDCAを回すためには、繰り返しになりますが、会計データを迅速に収集しなければなりません。こう見てくると、経営者は、事業の現場だけでなく、どうやって事業を進めていかなければならないのかということに、より注力しなければならないということが分かってくると思います。

2023/6/6 No.2365