鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ルールが明確でないとストレスを感じる

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、ルールが明確でないことは、リーダーの顔色をうかがい、空気を読みながら行動しないといけないため、部下にとってストレスになるということです。一方、ちゃんとルールがある会社のほうがギスギスせず、組織内の人間関係が良好になるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、ルールがあると窮屈さを感じると考える人がいますが、ルールがあることで、組織の構成員は具体的にどう行動すればよいのかが明確になり、ストレスを感じなくなるのであり、したがって、そのルールを決めることがリーダーの大切な役割であるということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、職場が空気の読み合いをしなければならないような環境になることは避けなければならないということについて述べておられます。「交通ルールを例に話を進めましょう。組織において事前にルールが明確化していない状況は、次のようなことを言われるのと同じです。『“自由に走っていい”って言ったけど、いま、60キ口で走っていたよね?ここ、実は50キ口以上で走っちゃダメなんだよ。だから遠反ね』そう言われて違反切符を切られてしまったら、とうでしよう。『最初からそう言ってよ』と思うはずです。リーダーは、このようなエラーをなくさないといけないのです。

あるベンチャー企業で働いている人がこんなことを言っていました。『自由な社風だと言うから自由に振る舞っていたら、あとから上司に注意された。自由といっても、結局ルールは上司が決めるのだから、はしめに言っておいてほしい』ルールが明確でないことは、部下にとってストレスになります。リーダーの顔色をうかがい、空気を読みながら行動しないといけないからです。どこに地雷が埋まっているかわからないところで自由に振る舞うことなんてできません。逆説的ですが、ちゃんとルールがある会社のほうがギスギスせず、組織内の人間関係が良好になるのです」(67ページ)

安藤さんのご指摘に対して、「自由にしていいといっても限度があるのだから、そこはいちいちルールで明文化しなくても理解することが社会人としての礼節ではないか」と考える方は少なくないと思います。私も、必ずしも、ルールになっていないからやってもよいと考えることは、妥当ではないと思います。しかし、恐らく、安藤さんのご指摘している論点はそこではないと、私は考えています。

これについては、精神科医である土居健郎さんが、著書、「『甘え』の構造」でご指摘し、広くしられているところですが、多くの日本人は、「これくらいのことは忖度してほしい」という「甘え」をもっているということです。では、何が甘えかというと、「これくらいのことは分かって欲しい」というのは、部下や家族など、自分よりも立場の弱い人に対してのみ感じるもので、上司や家族以外の人など、自分より立場の強い人には感じないからです。

そして、やや大袈裟かもしれませんが、現在、日本の大企業で不祥事が多く見られますが、これらの根底にあるものは土居さんの指摘している「甘え」があるからだと思います。話を本題に戻すと、ルールを明確にするのは、「甘え」が発生しにくくすることを目的とするものです。そして、ルールが明確になり、上司も部下もそれに従っているとう状態の職場環境があることによって、特に、部下たちは安心できる職場だと感じるようになるのだと思います。

2025/6/27 No.3117