[要旨]
北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんは、複数の書籍を執筆している理由の一つが共通言語化で、木下さんが持っている大量の暗黙知を共通言語化により形式知化し、それを本に書いているそうです。例えば、仕事が遅いメンパーに対し、具体的に「あれをやって、これをやって、優先順位は……」と言わなくても、書籍に書いてある「ビッパの法則でやって」と言えば伝わるそうです。その結果、同社では仕事のスピードが劇的に上がったそうです。
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今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の、木下勝寿さんのご著書、「チームX-ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんによれば、WEBマーケティング業界では、ほとんどの情報がデータ化されているため、従業員が日常的に触れる大半の情報は形式知であることから、暗黙知に慣れておらず、理解が苦手な人も多いので、木下さんは、共通言語化によって、暗黙知を形式知化して伝えるようにした結果、社内の知識レベルが一気に向上したということについて説明しました。
これに続いて、木下さんは、自社独自の概念や強みを共通言語としてご著書を書いたことで、社内での理解がより浸透したということについて述べておられます。「本書を含め、私が複数の書籍を執筆している理由の一つが『共通言語化』だ。私が持っている大量の暗黙知を『共通言語化』により形式知化しているのである。
たとえば、仕事が遅いメンパーに対し、具体的に『あれをやって、これをやって、優先順位は……』と言わなくても、書籍があれば『ビッパの法則でやって』と一言で伝わる。『ビッパの法則』とは、拙著『時間最短化、成果最大化の法則』で最も反響の大きかった『ビッと思ったらパッとやる』という習慣だ。やるベきことが起きたとき、その場ですぐやるか、すぐできない場合はいつやるかをその場で決める。これにより仕事スピードが劇的に上がる。また、本書で『企業組織病』として紹介した5つの病名はすベて私の造語だ。
メンパーが本書を読んでいれば『それって“職務定義の刷り込み誤認”が起きてない?』、『それ、“フォーマット過信病”だよ』と問題点が一言で共有される。そうすれば解決も早い。(中略)重要なのであえて繰り返すが、『暗黙知の形式知化』のキーになるのが『共通言語化』である。自社独自の概念や強みを『共通言語化』していけば、各メンパーの頭の中で再生・拡大され、チームは劇的に伸びていく。ぜひあなたの会社の強みを『共通言語化』してメンパーと共有してほしい」(304ページ)
もちろん、すべての経営者の方が、木下さんのように本を書いて、自社の暗黙知を形式知にする必要はないと思いますが、共通言語化を進めることは重要だと、私は考えています。ちなみに、ダスキン武蔵野を運営し、自らも経営コンサルタントとして他社のコンサルティングを行っている小山昇さんは、自社で使う用語の定義を本にして従業員に配り、火曜日~金曜日の毎朝、15~20の用語の読み合わせをしているそうです。
その用語集は、内容のすべてが書かれているわけでないものの、「仕事ができる人の心得」という本として出版されています。また、ドン・キホーテなどを傘下に持つパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)では、アルバイトを含むすべての従業員の方に、「源流」というタイトルの、経営理念が書かれた冊子を渡しているそうです。
小山さんの用語集も、PPIHの源流も、そこに書かれている内容も大切ですが、役職員の間で用語や考え方を統一させているという点に鍵があると思います。これも、前回の記事で少し触れましたが、経営者は自社の事業に関する知識が多く、また、経営者を中心に事業活動が回っている面もあるので、共通言語化の必要性をあまり感じないかもしれません。
でも、従業員の立場に立てば、経営者の持っている情報や、考え方が十分に伝わっているのかどうか、疑問の余地があると思います。もちろん、従業員が自ら努力をして、知識を増やすことも必要ですが、経営者が暗黙知などを共通言語化することで、従業員たちのスキルアップは効率化され、それは、業績の向上を加速させることになると思います。
2025/6/25 No.3115