鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

E-コマースは数時間で結果が出る

[要旨]

岩田松雄さんがザ・ボディショップの社長時代、E-コマースの販売額を、社長就任時の3,000万円から、その10倍の3億円に増加させましたが、その要因はテストマーケティングを行ったことです。すなわち、E-コマースで仮説→検証→修正のサイクルを回したためであり、E-コマースでは、テストマーケティングの結果が数時間で得られるため、そのサイクルが高速で回り、効果がより高いものになったと言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、岩田松雄さんがザ・ボディショップの社長時代、ライバル会社のサービスの覆面調査をした結果、従業員たちが感じている水準よりも高かったので、自分たちの感覚に頼ることなく、客観的なデータを基に事業の改善に臨むことが大切ということを説明しました。

これに続いて、岩田さんは、ザ・ボディショップのE-コマースの販売額を、岩田さんが社長就任時の3,000万円から、その10倍の3億円に増加させたことについて、その要因はテストマーケティングを行ったことだったということをご説明しておられます。「E-コマースには、売り上げ拡大とともに、(物流体制整備の他に)別の大きな期待を持っていました。

それは、お店では、数か月かかるテストマーケティングが、瞬時にできてしまうことです。つまり、仮説→検証→修正のサイクルが圧倒的に短いのです。何が売れているのか、どんなものが新しい動きになっているのか、キャンペーン商品の動きはどうかなど、リアルな店舗で調査をしようとすると、どうしても結果が出るまでに時間がかかります。ところが、E-コマースは、数時間単位、いや、分単位で結果が出ます。誰に何がどのようにうれているか、瞬時に結果が出てくるのです。

テストマーケティングが、簡単に、本社にいながら行うことができるのです。分かりやすい例だと、どの地域からネット注文が来るのか調べたところ、圧倒的に東京が多いのですが、新潟からの受注も多いことが分かりました。これは、以前、新潟に店舗があったのですが、ブーム後、閉店していたので、その地域のファンの方から注文をいただいていたのです。このデータを元に、再度、新潟に出店することにしました。一番の繁華街と、着実に売り上げの上がる郊外のモールに2店出店し、共に大成功しました」(142ページ)

この岩田さんのご指摘は、ひと言でいえば、E-コマースを使えば、テストマーケティングの結果がすぐに分かるということです。すなわち、岩田さんは、E-コマースを行うことよりも、「仮説→検証→修正のサイクル」を回そうとしていたことの方が重要だと思います。というのは、「仮説→検証→修正のサイクル」を回すことが目的であって、それを加速する手段がE-コマースだったということです。

もし、この本当の目的を強く意識していなければ、E-コマースだけを実施して、たまたま成功すればE-コマースは効果的だと判断し、逆にうまくいかなければE-コマースはあまり効果がないと、単純に判断してしまう可能性があります。繰り返しになりますが、岩田さんがE-コマースの売り上げを10倍にしたのは、E-コマースという手段によるのではなく、短時間で結果が出るテストマーケティングを実施したからだと考えるべきでしょう。

2023/6/5 No.2364