[要旨]
島田慎二さんは、千葉ジェッツの社長時代に、人事評価の基準を、フェアで透明性のあるものにするために、絶対評価を行っていたそうです。さらに、島田さんの考えをすべてオープンにし、高いレベルのスキルを蓄えてくれれば、誰でも高い評価を得られるチャンスがあることを明確にしたため、従業員の方たちの意欲を高めることができたそうです。
[本文]
今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、島田さんが千葉ジェッツの社長時代に、従業員の方に対し、「やりたい」と思える仕事があったら、「やるべき」に変換して考えてもらうようにしていた結果、利己的な視点ではなく、利他的な視点でも考えることができるようになり、従業員の方の仕事の幅が広がっていったということを説明しました。これに続いて、島田さんは、千葉ジェッツの人事評価を絶対評価とすることで、従業員の士気を高めていたということを述べておられます。
「人事評価には、絶対評価と相対評価があります。どちらにも一長一短があり、どちらが優れているのかは一概には言い切ることはできませんが、千葉ジェッツでは絶対評価を採用しています。なぜなら、人事評価の基準は、フェアで透明性のあるものにしたいというのが、私の以前の考えだからです。人事における絶対評価とは、設定された目標を、どの程度達成できたかによって評価する方法です。目標をクリアすれば高く評価され、未達成だと低い評価になります。
評価基準に従って1人ひとりを客観的に評価するので、他の社員と比較されることもなければ、他の社員の成果が評価を左右することもありません。(中略)ですから、私は、どれだけ難易度の高いことができるのかという観点を重視し、人員配置も個人の目標の設定も行っています。その部分を含め、私の考えをすべてオープンにしているので、高いレベルのスキルを蓄えてくれれば、誰でも高い評価を得られるチャンスがあります。『前向きに仕事をして自分の能力を上げられれば、社長はちゃんと見ていてくれる』そう実感できる環境をつくるのも、社長の仕事です」
この島田さんの考え方も、多くの方がご理解されると思います。そして、私は、絶対的評価を行うことも効果があると考えていますが、そのことよりも、人事評価に関する社長の考え方を、すべてオープンにすることが、もっと重要であると考えています。というのも、私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、どういう人が評価されるのかが明確にされている会社はあまり多くありません。もちろん、明確にしただけでは、従業員の方たちのモラールが向上したり、働きがよくなるわけではありません。
でも、もし、「うちの会社にはよい人材がいない」という不満を経営者の方が考えているとしたら、その「よい人材」というのはどういう人材なのかということは、経営者の方が頭の中のイメージしているだけでは、従業員の方たちはきちんと伝わりません。中には、少し極端かもしれませんが、単に、「あまり仕事を教えなくても、売上をとってきてくれる従業員がよい人材だ」といった、都合のよいことを考えている経営者の方もいるのではないでしょうか?そこで、経営者の方は、経営理念に照らし合わせてみて、自社に必要な人材とはどういう人材なのかを明確にすることで、経営者の方が従業員に対してどのような働きかけをすればよいのか、また、従業員もどのような能力を身につければよいのかも明確になり、より効率的な人材育成が可能になるでしょう。
とはいえ、従業員数が少ない会社の場合、わざわざ経営者が求める人材とはどういう人材かということを明確にする必要は、あまり感じないと考える経営者の方もいると思います。しかし、経営者が求める人材が明確でなければ、従業員の方から見て、自分の努力が報われるのかどうかが不安になります。そういう観点からも、島田さんの言うように、評価される人材が明確になっていることは大切です。
2023/7/25 No.2414