鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

部下は本心では成長意欲がある

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、部下は必ずしも自分の考え方を正直に口にしているとは限らないので、表向きは「楽しく働ければそれで満足」と言いつつ、実際は「楽しいだけではいけない」ということを理解しているので、上司は部下が成長する意欲があることを前提に部下に接しなければならないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、経営者は、楽しい学校の先生ではなく、厳しい塾の先生を目指さなければならず、なぜなら、厳しい塾の先生は、嫌われて孤独になる可能性もありますが、楽しいけれど緊張感がなくて志望校に落ちるよりも、厳しいけれど緊張感に溢れ、志望校に受かるよう指導する先生の方が、後に評価されることになるからだということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、経営者は部下の言う建前をそのまま受け取ってはならないということについて述べておられます。「人間は何を基準に動くのでしょうか。行動のきっかけはなんでしようか。『楽しいから動く』、『気持ちがいいから動く』、『安心するから動く』……。いろいろな行動のきっかけがあると思います。ただ、突きつめると、行動のきっかけは1つだけです。それは、『自分に利益があるかどうか』です。

人は自分に利益があると判断したときに動きます。意識的にも無意識的にも、利益があるかどうかを基準にしています。人間とは、そもそもそういう生き物です。利益があれば動く。それだけです。逆に、利益が減ることには『恐怖』を感じます。利益が減ると思えば、減らない方向へと行動をとるはずです。『リーダーについていきたいかどうか』も、すベて『自分にとって利益があるかどうか』で決まります。部下がそのリーダーの下にいることが自分にとって『利益』だと判断すれば、『ついていきたい』となります。『利益にならない』と思えば、いい人であっても、ついていきません。

本当についていきたいと思われるリーダーは、『利益をもたらしてくれる人』です。仕事に厳しくても、『数年後には成長できるはずだだ』と、利益を感じさせることが大事です。部下は、友達や恋人を探しに会社に来ているわけではありません。ビジネスをしに、稼ぐために来ているのです。もしかしたら、部下は口では、『楽しく働ければ、それだけで満足です』、『ラクに働ければ、成長しなくてもいいです』と言うかもしれません。しかし、その言葉を真に受けてしまっては、リーダー失格です。本当に楽しいことをやりたいだけなのであれば、それはプライベートで友達や恋人と遊んで楽しんでいるはずです。

ラクに働けるほうがいい』と本心で思っているだけなのであれば、責任の少ないフリーターなどの働き方をしているはずです。つまり、どちらもリーダーが考えるベき問題ではありません。それに、部下も本心では『楽しいだけじゃダメ』、『ラクなだけじやダメ』とわかているはずです。人は、つねに言行一致しているわけではありません。本音と建前があります。リーダーの仮面も、まさに建前を利用したマネジメント方法です。組織に所属している以上、本心では『成長意欲があること』を前提にリーダーはマネジメントし、部下を『使えない社畜』にしないようにすベきです」(149ページ)

私は、安藤さんん指摘を読んで、2つの言葉を思い出しました。1つ目は、東京都にある妙円寺に掲げられているという「 言っていることではなくやっていることがその人の正体」という言葉です。私自身にも言える言葉ですが、人は、意図している場合も、意図していない場合もありますが、自分んも考えをそのまま言葉にしません。ですから、行動を見ればその人の本心がわかるということです。私も、口では痩せたいといいつつ、行動がともなっていないので、日々、反省しています。そして、安藤さんがご指摘しておられるように、「楽しく働きたい」と口にする部下は、本心でそうなのか、本心は別なのか、行動を見ていればわかるということは、その通りだと思います。

2つ目は、釈迦の言葉と言われている、「我は、良医の病を知って薬を説くが如し、服すと服せざるとは医のとがにあらず、また、よく導くものの、人を善導に導くが如し、これを聞いて行かざるは、導くもののとがにあらず」というものです。すなわち、上司が部下を指導しようとしても、その指導を受け入れて実践するかどうかは部下次第であるということです。安藤さんも、部下が楽な仕事をしたいのか、自分を鍛えようとするのかは、部下が考える問題であり、上司が考える問題ではないとご指摘しておられます。

上司としては、部下に成長して欲しいと願うと思いますが、それを上司が促すことはできても、最終的には部下自身が決めることであり、上司にはどうしようもないということです。これについては、別の意見を持つ人もいるかもしれませんし、実際に、部下の考え方を変えることができた人もいるかもしれません。しかし、私は、そのような例は割合としては低く、上司は、当面は、成長したいと考えている部下を中心に指導することが妥当だと考えています。

2025/7/3 No.3123