鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『姿勢のルール』が帰属意識を高める

[要旨]

株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、「あいさつをしましょう」、「会議には遅れず参加しましょう」など、やろうと思えば、誰でも守ることができるルールを姿勢のルールと呼んでいるそうですが、姿勢のルールを決めてそれを守らせることで、メンバーに「この輪の中にいるんだ」、「この会社の一員なんだ」という認識を持たせられるメリットがあるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、ルールが明確でないことは、リーダーの顔色をうかがい、空気を読みながら行動しないといけないため、部下にとってストレスになりますが、一方、ちゃんとルールがある会社のほうがギスギスせず、組織内の人間関係が良好になるということについて説明しました。

これに続いて、安藤さんは、「姿勢のルール」をつくることで、従業員の帰属意識が高まるということについて述べておられます。「ルールには大きく分けて2種類があります。『行動のルール』と『姿勢のルール』です。まず、『行動のルール』とは『1日に10件営業回りをする』、『会社に1,000万円の利益をもたらす』といったルールです。これらは会社が設定した目標と連動したルールです。したがって、守れる場合と守れない場合があり、それによって部下は評価されます。(中略)

『姿勢のルール』とは、『できる・できない』が存在しないルールのことです。まさに姿勢が問われるルールなので、『姿勢のルール』と呼んでいます。『あいさつをしましょう』、『会議には遅れず参加しましょう』、『日報を17時までに提出しましょう』なとが姿勢のルールにあたります。これらには、『やろうと思えば、誰でも守ることができる』という特徴があります。姿勢のルールは、リーダーに対する姿勢を表すものです。

『できる・できない』が存在しないので、守らない人間は『意図的に守っていない』ことになります。姿勢のルールを徹底して守らせることが、組織のリーダーとしての一丁目一番地にあたります。これができない人にリーダーの資格はないのです。『姿勢のルール』を決めてそれを守らせるのには、大きなメリットがあります。それは、メンバーに『この輪の中にいるんだ』、『この会社の一員なんだ』という認識を持たせられることです。学生時代の友達グループを想像してみてください。

自分たちの中で、『悪口は言わない』などの暗黙のルールをみんなが守っていれば、『こいつは仲間だな』と思ったはずです。逆に、その暗黙のルールを破るような人間が出てきたら、『こいつとは仲間で居続けるのは難しいな』と思たはずです。会社は学校ではありませんから、そのルールを『言語化』してシェアすることが必要です。口頭だけで伝えるのではなく、メールや共有ファイルなとで文章にし、いつでも見られるようにします。ルールはそのチーム、組織ごとに違って構いません。極論を言えば、なんでもいい。『できる・できない』が存在しないルールを守らせる、ということが重要です。

それにより、『上司と部下』、『リーダーとメンパー』の関係をつくっていきます。『姿勢のルール』がない組織では、組織に対する帰属意識が働きにくくなります。ただし、ルールが部下ごとに異なるのはNGです。たとえば、『あなたは会議には来られるときだけでいいよ』や『あなたは日報を月末にまとめて出す人だよね』と、人によってそれぞれルールが違うような状況です。よかれと思ってこれをしてしまうと、組織への帰属意識は薄れます。ルールは『全員が守れる範囲』で統一すベきです。共通のルールを守っていることイコール、その組織の一員であるという認識を持ことになります」(72ページ)

仮に、従業員の間に能力の優劣があるとしても、「姿勢のルール」は、能力の優劣に差に関係なく誰でも守ることができるので、これを全員が守っていれば、一体感が生まれるということは、私もその通りだと思います。そして、私の感覚では、誰でも守ることができるルールを守ってもらうことは、一朝一夕にはやや難しいかもしれませんが、長期的にはそれほど難易度が高くないと思います。

そこで、このことによって、帰属意識を高めることができるとすれば、「自社はあまり一体感がない」と感じている経営者の方は、姿勢のルールをつくり、守ってもらうことに注力するとよいのではないかと思います。ただ、これは私の中小企業の事業改善の経験から感じることなのですが、職位が上位にある人、特に、経営者の方は、姿勢のルールのようなルールを守らない傾向があると感じています。

これは、もちろん、驕りががあるからで、避けなければならないことではあるものの、経営者としての自覚が不足している人は「自分は社長だから…」と考えてしまうのでしょう。しかし、そういう人がトップに就くと、部下たちは、「自分は単なる従業員に過ぎないので、押し付けられたルールに従うしかない」と感じるようになり、組織としての一体感も損なわれ、それは業績にも悪い影響を与えるようになるのでしょう。ちなみに、ルールに関することではないのですが、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんは、自らが率先して掃除を行うことで、会社の業績を高めてきたことは広く知られています。

もちろん、最初から、鍵山さんの部下の方全員が、鍵山さんの方針に賛成していたわけではないそうです。でも、少なくとも、鍵山さんが驕っていると感じた従業員の方はいなかったでしょう。その後、鍵山さんの考え方を理解し、いっしょに掃除をする人たちが徐々に増えていったそうです。少し失礼な言い方ですが、掃除は誰でもできることです。この掃除を、社長も従業員も一緒になって行うことで、会社の一体感が強まり、イエローハット業績も高まっていったのだと、私は考えています。

2025/6/28 No.3118