[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、優秀な人がいることが優秀な組織であると考えられがちですが、実際はそれは逆で、優秀な人が不在でもチームとして機能することで勝てる組織が優秀な組織だということです。そのような組織では、どんな人が組織に加わっても、当たり前のことをやれば成果を出すことができます。しかし、優秀な人に頼っている組織、すなわち属人化に陥っている組織は、優秀な人が欠けると成果は下がり、リスクが高い組織であると言えるということです。
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今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、会社では、しばしば、「自分だけが活躍し、他の人が追いつけないような状況をつくる」という属人化が起きますが、それは、その方が個人はトクであり、自然な状態なので、経営者は、そのような属人化が起きないよう、働きかけることが重要であるということについて書きました。
これに続いて、安藤さんは、属人化のリスクについて述べておられます。「仕組み化がなく、人に依存する組織があります。『ウチの会社は、優秀な人が集まつている』その瞬間は、別にいいかもしれません。しかし、その中で特に優秀な人が辞めたらどうなるでしょうか。1人が辞めることでガクッと売上が落ち込んでしまうでしょう。『優秀な人』がいることが、『優秀な組織』であることとイコールではありません。むしろ、逆です。『優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織』それが、優秀な組織です。
普通の人の集まりでも、『当たり前のこと』をやれば勝てます。もしいま、1人の社員にオペレーションが依存している状態にあるのであれば、その状況は変えないといけません。その人が退職するとオベレーションが回らなくなっでしまう、という状況はマズいのです。ある業務が、1人部署で行われていて、その人が休んだりすると、誰も業務がわからなくて、休みが明けるのを待つ……。そんなことがないでしょうか。属人化はリスクです。一時的にうまくいっていても、やがて停滞します。
たとえば、会社の営業成績で考えましょう。初年度に、営業の全員の順位が出ます。その後、2~3年後も、同じ順位のままだったとしたら、その組織はマズい。最初は下位グループだったのに、努力によってトップにまで上り詰めたり、逆に、最初は優秀でもサポると追い抜かれたりしていく。本来であれば、それが組織として、きちんと機能している証拠です。しかし、それが起こらないとなると、組織が属人化に陥っている状態です。組織側の『仕組み』の問題と考えざるをえません」(61ページ)
組織のすばらしさは、「1+1=2」ではなく、「1+1>3」になることということは広く知られていることです。これについては、安藤さんも、「優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織が優秀な組織である」と述べておられます。これも安藤さんがご指摘しておられますが、よく、優秀な人が多い組織は、成果も大きくなると感じがちですが、もし、そうなるのであれば、その要因は、組織が優れているからではなく、組織の構成員が優れているからということになります。
私も、中小企業経営者の方から、「自社には優秀な人材がいないから、業績もあまりよくない」ということを聞くことがあります。その気持ちも理解できなくもありませんが、そもそも優秀な人材は会社に雇われなくても自力で稼ぐことができるわけですから、優秀な人材を集めようとする考え方はあまり賢明ではありません。もちろん、「1+1>3」になる組織をつくること(これは、ほぼ、「組織開発」と同義だと思います)は容易ではないということは、私も感じています。
しかし、組織とは組織的活動をすることに意義があるわけですから、経営者としてそのような努力を避けることは、経営者の責任を放棄しているようなものではないかと私は考えています。むしろ、組織が組織的な活動をできるようにすることが、経営者の最も重要な役割であり、会社を起こして経営者となった時点で、その使命を強く認識しなければならないはずです。ただ、残念なことに、それを認識していない経営者も少なくないことから、属人化が起きている組織もなかなか減らないのでしょう。
2024/12/27 No.2935