[要旨]
経営者の方は、事業の改善に効果があると考えて、自ら選択した活動に取り組むものの、その中には、必ずしも事業の改善につながらないものもあるので、活動の結果を受け入れ、その原因を冷静に見つめ直すことが大切です。
[本文]
経営コンサルタントの斎藤之幸さんのご著書、「アホ社長の頭の中」を読みました。この本の主要な内容は、会社の事業がなかなか上向かない原因は、社長自身にあるというものです。この、社長に原因があるという意味は、社長というポジションから、業績の最終的な原因が社長にあるという意味ではありません。社長が事業を改善しようと考えて行っている活動の中には、実は、社長の思惑とは逆に、業績を下げてしまっているという意味です。
例えば、外注費を減らそうとして、外注していた仕事を社内でやることにしたら、従業員の勤務時間が増え、減らした外注費よりも多くの残業代を払うことになってしまうというようなことです。こういった事例は、同書でたくさん指摘されており、コンサルタントである私も、斎藤さんが指摘していることと似たような例を、これまでたくさん見てきました。とはいえ、そういう経営者の方たちは、当然のことながら悪意があるわけではなく、会社をよくしたいという思いで、いろいろな活動をしているということは理解できます。
ただ、それが必ずしも正しいとは限らないのであり、そして、人間の能力には限界があるので、間違った活動をしているときに、そのことにもなかなか気づくことができないのでしょう。そして、そういう私自身も無意識の内に、業績を上げようとしながら、実は業績を下げるようなことをしていると思います。さらに言えば、人間は完全な存在ではないので、常に100%正しいことをしている訳ではないので、どうしても失敗を避けることはできないでしょう。
だから、どんな経営者も、冷静になって、自分が活動している内容が本当に効果があるものかどうか、自分自身、または、外部専門家から検証してもらえるようにする必要があるということを、斎藤さんの本を読んで、改めて感じました。最もまずいことは、経営者の方が、自分の判断は正しいと思い込んでしまうこと、自分の判断の誤りを受け入れることができないこと、事業がうまくいかないときに、その責任は自分以外にあると思い込んでしまうことでしょう。