[要旨]
会社の業績を高めるためには、コミュニケーションを活発にすることが大切ということは理解されやすいものの、事業活動の現場では、目の前の仕事や目標達成のための活動が優先され、コミュニケーションの必要性を感じる人は少ないようです。そこで、事業間のプロジェクトを実施するといった、従業員同士のコミュニケーションの機会を増やす工夫が効果的です。
[本文]
今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、役員のような能力の高い人は、他人から意見を言われることを嫌うため、役員同士や、部下たちとの間で、コミュニケーションが一方的になり、そのことが、組織的な活動の妨げになっているということを説明しました。このような状況の解決策として、鈴木さんは、まず、経営トップであるCEOと各役員との間で、1対1の対話を行い、双方向のコミュニケーションを行うことが必要と説明しています。
その次は、事業部をまたがったプロジェクトを行うことで、役員同士のコミュニケーションを行わせるようにするとよいと述べておられます。「社長と役員の、“縦のコミュニケーション”が双方向になったら、次は横です。しかし、経営チームの役員を横につなげ、双方向のコミュニケーションを増すのは、そんなに簡単なことではありません。あるロジスティクスの会社で、就任したばかりの社長のコーチングを始めたときに、『会社の何を変えたいですか?』と伺うと、『役員間のコミュニケーションが絶望的に少ない』と、少しおどけたような顔をして答えました。絶望的と言うのは、強い表現だなと思いましたが、社長は、『会議以外の場面で役員同士が話をしているのを、ほとんど見ていない』とおっしゃるのです。
そこで、実際はどうなのか、役員の方々にインタビューすると、次のような答えが返ってきました。『そもそも、執行役員は、部門に対する執行責任を持っているので、自分の役割は、自部門を発展させること、他の役員と話す時間を、なぜ取らなければならないのか』『別に仲が悪いわけではない、ただ、それほど話す必要がない』(中略)コミュニケーションを取る必要がない-同じ会社の役員同士なのに、『なぜ?』と思われるかもしれませんが、実際にコミュニケーションの必要性をあまり感じていないようでした」(108ページ)
会社の業績を高めるためには、組織的な活が大切、それが実践できるようにするためにはコミュニケーションが重要ということは、ほとんどの人が理解すると思います。でも、実際の事業活動の場では、目の前の仕事こなしたり、目標を達成したりすることが最優先され、コミュニケーションについては優先度が下がってしまうことが現実のようです。すなわち、コミュニケーションの確保は、理屈を唱えるだけでは実現しないと言えるでしょう。だから、会社内でコミュニケーションを活発にするためには、社長の掛け声だけでは実現しなさそうです。
これに関しては、鈴木さんは、前述のように、事業部をまたがったプロジェクトを実施してもらうようにしていますが、私は、中小企業では、QCサークル活動(小集団活動)や、5S活動でも、社内のコミュニケーションを活発にすることができると考えています。もし、自社のコミュニケーションが一方通行であると感じていたり、部下に質問をしてもあまり反応がないと感じていたりする経営者の方は、QCサークルなどを実践してみることをお薦めします。
2022/8/29 No.2084