鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

任せて任せず

[要旨]

経営者が部下に権限移譲をしたとしても、仕事の管理をしたり、助言をしたり、責任をとったりする役割は、経営者から外すことはできないので、経営者がそれを理解していれば、権限移譲したつもりで、実際には仕事を丸投げしていいるということは、起こらないでしょう。


[本文]

経営の神さま、松下幸之助が、「任せて任せず」ということばを残したことは、多くの方がご存知のとおりです。このことばは、「権限移譲」と「丸投げ」の違いを説明するときに、よく使われるようです。すなわち、部下に仕事を任せることは必要だけれども、任せっぱなしの丸投げではいけないのであり、適宜、報告を受けたり、助言をしたりしなければならない。もし、部下が任せた仕事に失敗しても、最終的な責任は経営者がとらなければならないということです。

この両者の違いについては、私が再びここで言及するまでもないのですが、経営者が「権限移譲」したつもりで、「丸投げ」をしてしまうことは、まま、見られると思います。例えば、「社長からこの仕事をやるようにと指示されたのに、失敗しそうになったらはしごをはずされた」という不満を口にする部下をみることがあります。

実は、私が会社員時代にも、このような経験があります。そして、そういうことが起きてしまう原因のひとつに、経営者が、経営者の役割を、きちんと理解できていないことにあると、私は考えています。すなわち、松下幸之助の「任せて任せず」は、前述のように、実際の活動は部下に代わってもらっても、管理、助言、責任は経営者に残るということです。

でも、社長とすれば、部下に対し、「この仕事は、お前に任せる」と言ったときに、管理したり、責任をとったりすることまで部下に代わってもらいたいという気持ちもあるのでしょう。しかし、管理したり、責任をとるという役割は、経営者とは不可分です。むしろ、それを専門に行うことが経営者の務めであり、多くの人が避けたがるつらい役割です。それが分かっていれば、部下に仕事を任せたとしても、松下幸之助の指摘のとおり、管理したり、責任をとったりするということまで、自分から切り離せるというようには思わないでしょう。

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