[要旨]
たばこの銘柄などのように、顧客からの支持が強く、競合する商品に顧客を容易に奪われにくい商品は、ニーズが深いと言えます。逆に、ミネラルウォーターのように、顧客から見てあまりこだわりがない商品は、ニーズが浅い商品です。そして、ニーズの広さと深さに応じて、適切なマーケティング戦略を行うことが、高い効果を得ることにつながります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、商品のニーズの広さについて説明しましたが、それに続いて、佐藤先生は、ニーズの深さについてご説明しておられます。「ニーズの広さに対して、購買・ブランド選択に、より強いこだわりを持つ商品・サービスが、『ニーズが深い商品』です。
ニーズが深いブランドは、すなわち、ロイヤルティ(忠誠度)が高いブランドということです。特定のブランドに対しての深さもありますし、商品のカテゴリーによっても、深さが違います。趣味性が高く、『マニアック』な商品カテゴリーであればあるほど、ニーズが深くなります。ニーズの深い、浅いは、ニーズの広さにかかわらずありえます。ニーズが深い商品の典型は、たばこです。私はたばこは吸いませんが、スモーカーによると、たばこのブランドスイッチは、滅多に起きないそうです。誰かに『たばこ買ってきて』と頼むときには、必ずブランドの指定が入ります。
たばこと比べ、例えばミネラルウォーターは、ニーズが浅いと言えます。誰かに『ペットボトルのミネラルウォーターを買ってきて』とお願いする場合に、ブランド指定が入ることは希でしょう。したがって、ニーズが浅い商品は、頻繁にブランドスイッチが起きます。逆に、ニーズが深ければ、ブランドスイッチが起きにくいので、お客様は同じものを買い続けます。(中略)さらに、ニーズが深いほど、価格感応度が鈍くなります。すなわち、特定のブランド、商品、店でなければならないということですから、ニーズの深い商品は、多少高くても売れるのです」(138ページ)
今回は、ニーズの深についての説明でしたが、佐藤先生は、別のところで、ニーズの広さと深さのチャートを説明しておられます。これについては、必ずしもきっちりと分けられるものではありませんが、酒類をニーズの広さと深さで分けると、次のようになると考えられます。(1)ニーズが広くて深い→ビール:(2)ニーズが広くて浅い→ワイン:(3)ニーズが狭くて深い→ウィスキー:(4)ニーズが狭くて浅い→日本酒
そして、今回は、具体的なものの説明は割愛しますが、これらの4つの分類ごとに適したマーケティング戦略も異なるということは、容易に理解できるでしょう。もし、自社のマーケティング戦略についてニーズの広さや深さの視点から検討したことがないという会社では、自社の商品についてニーズの広さと深さで分類してみて、それぞれのマーケティング戦略が適しているかどうかを再確認してみるだけでも、改善のヒントが得られるかもしれません。
2023/2/5 No.2244