[要旨]
販売する商品には、多くの人が購入する、ニーズの広い商品と、少数の特定の人が購入する、ニーズの狭い商品があるので、ニーズの広さに合わせたマーケティング戦略を行う必要があります。ただし、現在は、ニーズの広い商品では競争に勝ちにくくなってきていることから、より、ニーズの狭い商品で勝負しなければならなくつつあると考えることができます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、同じ金額の売上でも、たくさんの顧客が1つの商品を買う場合と、少数の顧客が何度も商品を買う場合があるので、そのような売上の構造を把握した上でマーケティング戦略を実施することが重要だということについて説明しました。
これに続いて、佐藤先生は、「ニーズの広さ」についても把握することが重要であると説明しておられます。「より多くの人が欲する商品は、『ニーズが広い』ことになります。個人向け商品であれば、幅広い年齢層や、男女両方に受け入れられる、法人向け商品であれば、業種・企業規模などにかかわらず受け入れられる商品は、『ニーズが広い』ことになります。逆に、数少ない特定の顧客層に支持される商品・サービスが、『ニーズが狭い』商品で、これは、ニッチ商品とも呼ばれます。
例えば、ポテト菓子でも、ポテトチップスのうす塩などは、万人受けしますが、カラムーチョ、暴君ハバネロなどの辛いポテト菓子は、顧客を選ぶ、すなわち、ニーズの狭い商品です。一方、ニーズが広い商品は、先ほどの例で言えば、1万円の商品を1,000人に売って、1,000万円の売上を作っている場合です。そこで、ニーズを広げるには、ターゲットを拡大し、今買っていただいている人とは別の人に勝っていただくためのマーケティング戦略を実践することになります」(137ページ)
この佐藤先生のご説明はその通りなのですが、現在は、「もの」の消費の意味合いが徐々に薄れ、「こと」の消費の意味合いが濃くなってきていることから、万人受けするニーズの広い商品は、人気が低下してきているように感じます。例えば、日清食品のカップヌードルや、まるか食品のペヤングソースやきそばは、長い間、オリジナルの製品が売れていましたが、現在は、頻繁に新しい種類の商品が開発されています。赤城乳業のガリガリ君も、すでに、100種類以上の製品が開発されています。すなわち、現在は、多品種大量生産の時代になってきているということだと思います。
もちろん、多品種大量生産ができるようになってきた背景には、情報技術の進展があるという面もありますが、そうは言っても、顧客のニーズの多様化に応えなければ競争に勝てなくなってきているという側面が強いと思います。このことは、経営資源の小さな会社が、かつてのように、大企業が不得意としてきた、細やかな対応で競争に優位に立つという手法では、勝ちにくくなってきつつあるということでも考えることができます。したがって、中小企業は、自社の細やかな対応を、より際立たせる、すなわち、よりニーズの狭い商品を開発しなければならなくなりつつあると、私は考えています。
2023/2/4 No.2243