鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

戦場を選べば得られる果実が大きい

[要旨]

同じ回転寿司店でも、競合相手が多い場所では、値段や品質が優れていても、あまり売上が伸びない一方で、競合相手が少ない場所では、あまり努力をしなくても売上が増えます。したがって、どこで事業を展開するかということは、収益機会に大きく影響することになります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。佐藤先生は、マーケティング戦略において、立地の重要性について説明しておられます。「東京の渋谷に、私のお気に入りの回転寿司屋があります。入ると、『いらっしゃいませ!』と、元気のいい声で気持ちよく迎えてくれます。1皿オール110円、ネタも新鮮で、そこらのカウンターの寿司屋に負けないくらいおいしいのです。

しかし、不思議なことに、いつも空いています。(中略)私の自宅の最寄駅から、徒歩1分のところにも、回転寿司屋があります。1度だけ入ったことがありますが、味は…まあ食べられますけど、そんなにおいしくもありません。値段は…1皿100円のものもありますが、ちょっと豪華なネタは200円、300円。店員の態度もいまひとつ、渋谷の回転寿司より、どの点を取っても劣っています。しかし、不思議なことに、夜には人があふれて行列ができているのです。

自宅近くの安くもなく味も普通の回転寿司屋には行列ができて、渋谷の回転寿司屋が空いている理由は…戦場が違うのです。渋谷は競争が激しいのです。安くておいしい回転寿司屋はもちろん、うまいラーメン屋、おしゃれなイタメシ屋などなど、強力な競合店が無数にあります。ですから、私のお気に入りの回転寿司屋は空いています。しかし、私の自宅の近くでは、そもそも、飲食店が少なく、回転寿司屋は1軒もないので、競合が非常にすくなく、行列ができているのです。勝ちやすい戦場を選べば、努力量が同じでも、得られる果実が大きく違うのです」(28ページ)

顧客がどれだけ得られるかには、飲食店やサービス業では、立地が重要だという事例です。私も、知人の居酒屋店の社長さんにきいたことがあるのですが、以前は、各駅停車の電車しか停まらない駅の近くで店を借りて営業していたのですが、その貸店舗が解体されることになり、1駅となりの、快速電車が停まる駅の近くに移転したそうです。そうしたら、来店者が増加したとのことでした。もちろん、快速電車の停車駅の周りには、たくさんの飲食店があったのですが、その駅の利用者も多いので、1店舗あたりの通行人の数が増加したと考えることができます。

また、飲食店ではなく製造業の例ですが、かつては、最寄駅が各駅電車だけが停車する駅で、そこから徒歩10分ほどかかる場所に工場があったそうです。しかし、経営コンサルタントからの助言にしたがって、快速電車の停車駅のそばに工場を移転したそうです。そうすると、その会社に勤務したいという希望者が増加し、求人にあまり困らなくなったということです。

これらの例は、立地を変えたことによる成功事例であり、すべての会社にあてはまるというわけではありませが、立地は重要ということは理解できるでしょう。私は、ときどき、手許資金が不足するなどの理由で、立地の悪いところに店舗を出店してしまう例を見ることがあります。しかし、現在は競争が激しい時代であり、拙速な出店の判断は、かえって、収益機会を逃すことになります。事業をどこで行うかについては、起業前に広い選択をできるようにすることが重要だと考えています。

2023/1/25 No.2233