[要旨]
2003年に商法が改正され、現在の指名委員会等設置会社という制度ができましたが、指名委員会等設置会社の取締役と執行役は、オフィサー制度のディレクターとオフィサーに相当する役割を担っています。
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前回に引き続き、マネジメント層の構造について説明します。前回は、オフィサー制度について説明しましたが、日本でも、オフィサー制度に近い会社制度の法整備が行われました。それは、2003年の商法の改正によって作られた委員会等設置会社で、現在は、会社法によって規定される、指名委員会等設置会社に引き継がれています。したがって、ここでは、指名委員会等設置会社について説明します。
指名委員会等設置会社では、株主総会で取締役が選任されますが、この取締役は(後述する執行役を兼任している場合を除き)業務執行は行わず、意思決定と監督のみを行います。その代わり、指名委員会等設置会社の業務執行は、取締役会で選任される執行役が担います。(オフィサー制度を導入している会社のオフィサーや、執行役員制度を導入している会社の執行役員は、取締役が兼任している場合を除き、その会社の従業員ですが、指名委員会等設置会社の執行役は、取締役会が選任することから、従業員ではなく、取締役と同様の役員とされています)
ちなみに、執行役(執行役が複数名いる場合は、取締役会が執行役の中から選任する代表執行役)は、指名委員会等設置会社以外の株式会社の代表取締役のように、代表権を有します。また、取締役(その会社の監査委員となった取締役を除く)は、同時に執行役を兼任することもできます。したがって、指名委員会等設置会社の取締役と執行役は、オフィサー制度のディレクターとオフィサーに相当する役割を担っていると言えます。
そのため、オフィサー制度を導入していた会社が指名委員会等設置会社となる例もありますが、必ずしも、すべての会社が指名委員会等設置会社になってはいません。その理由の詳細な説明は割愛しますが、指名委員会等設置会社は、指名委員会等設置会社でない株式会社と比較して、法律の規定が複雑であることが考えられます。そのため、法律上は指名委員会等設置会社でない会社のまま、オフィサー制度を導入することを選択する会社も少なくないようです。ただし、指名委員会等設置会社が、執行役をオフィサーと呼ぶことがあり、例えば、指名委員会等設置会社の役員が、社長兼代表執行役CEOや、副社長兼執行役COOなどの肩書を持つ場合があります。