鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

害虫は害か?

[要旨]

ビジネスにおいて、それを遂行するときに不都合なものは、悪いものと評価してしまいがちですが、もっと大きな視点でみると、必要であるということもあるので、ビジネスパーソンの方は、より大きな視点を持つことが大切です。


[本文]

先日、青森県で無農薬でリンゴを栽培している、木村秋則さんをレポートした、「奇跡のリンゴ」を、オーディオブックで聴きました。同書は、以前も読んだことがあるのですが、あらためて、オーディオブックで聴いてみて、ちょっと感銘したので、今回、記事にしてみようと思いました。

おおよそのストーリーは、リンゴの無農薬栽培に挑んだ木村さんは、農薬を使わず、リンゴの木についた害虫を手で取り続けたものの、それでも害虫を完全には駆除できず、葉を食べられてしまったリンゴの木はだんだん弱って行き、5年ほど経っても、無農薬でリンゴを実らすことはできなかった。万策尽きた木村さんは、ある日の夜中に、岩木山に登り、首を吊ろうとしたところ、目の前に、葉が害虫に食べられていないブナの木があるのを見つけた。

農薬を使っていないのに、なぜ、害虫がいないのか調べたところ、微生物のたくさん入っている柔らかい土が、ブナの木を健康にしているため、害虫が葉を食べないということが分かった。そこで、木村さんも、リンゴ畑に、大豆を植えて、土に微生物がたくさん住むようにしていったところ、リンゴの木が健康になり、無農薬でも実をつけるようになった、というものです。

このエピソードからは、たくさん、学ぶことがあると思うのですが、私は、害虫は、人にとって不都合な虫というだけで、自然全体からみれば、生態系のひとつであり、もともと日本になかったリンゴを日本で育てようとして、リンゴの葉を食べる虫を害虫と呼ぶのは人間の都合と、木村さんが述べていたことが、印象に残りました。

私自身もそうですが、多くのビジネスパーソンは、自分にとって不都合なものを、非効率なもの、障害となるものと受け止めてしまいがちですが、社会全体からみれば、それは、必ずしもそうとは限らないことかもしれません。例えば、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんが、メールマガジンに書いておられたのですが、トイレ掃除で有名な鍵山さんの会社の従業員のうち、20%はトイレ掃除をしないそうです。

しかし、鍵山さんは、「むしろ、全社員、同質の価値観で動いている方が異様な感じがします。会社は、同質のひとばかり集まったときに、腐敗するものです」と述べておられます。そういった、もっと大きな視点で状況をとらえることが大切ということを、奇跡のリンゴを聴いて、あらためて感じました。

 

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