鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報技術と人材育成

[要旨]

情報技術の進展が目まぐるしい中、新たな情報技術を活用するには、単に、それを導入するだけでは事業は改善せず、それを使いこなせる人材の育成も大切であり、その人材育成をする役割が、これからの経営者に大きく求められています。


[本文]

TABLY株式会社代表の、及川卓也さんが、ダイヤモンドオンラインに、ディスカウントストアのTRIALに関する記事を寄稿しておられました。記事の要旨は、TRIALでは、売り場の管理や顧客の購買行動の分析、販促など、流通の現場でIoT(もののインターネット)とビッグデータを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション、情報技術などを活用して事業を根本的に改善させること)を導入しようとしている。これにあたり、同社の永田社長は、まず、「当社の会社名のTRIALは、当社のビジョンでもある」として、「いつも新しいことをやる」という価値観を、従業員に訴え、業務上の課題に対して挑戦的な手段を選ぶかどうか迷っている従業員の背中を押すようにしている。

つぎに、DXを遂行するためには、共通言語が重要であるとの考え方から、同社のコンサルティングを依頼している、米国の経営コンサルタント、ジェフリー・ムーア氏の著書、「ゾーンマネジメント」の読み合わせを、10年以上前から実施している。同書は、管理職全員が読んでいて、書籍の中で使われている単語やフレーズは、日常的に会話で用いられるほど、社内に浸透している、というものです。

同社では、先進的な情報技術を駆使して業績を伸ばしていますが、単に、「仕組み」を取り入れるだけでなく、ビジョンや共通言語の浸透という、組織能力の向上も同時に行っているところが、成功の大きな鍵になっていると思います。この記事を読むと、それは当然のことと感じる経営者の方は多いと思うのですが、実際には、新しい情報技術の導入はするものの、それを活用するための人材育成や、情報技術を活用した経営戦略の策定など、情報技術を十分に活用するための体制を整えていないという例は少なくありません。

経営者としては、「情報技術を導入するのだから、業績は向上するだろう」と考えがちですが、新しいツールは、使いこなすことができて、初めて効果が得られます。すなわち、繰り返しになりますが、情報技術がますます高度化していく時代にあっては、それを自社に取り入れるために、人材も育成していかなければならないということが見落とされがちです。これを言い換えれば、人材育成、組織開発という経営者の役割が、ますます重要になっているということです。情報技術が進展しているとはいえ、それと同時に「人」や「組織」こそ、ライバルと差をつけるポイントになっています。

 

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