鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

褒めてやらねば人は動かじ

[要旨]

部下の指導は褒めることが大切だと理解しつつも、実際に、経営者や管理職の方の多くは、育成スキルを身に着けていないために、厳しい指導をしてしまいがちですが、現代は、従業員を育成できなければ業績もあがらないので、経営者や管理職の方は、人材の育成スキルを身に着けることが望まれています。


[本文]

社会保険労務士藤咲徳朗さんが、2020年7月22日に配信したメールマガジンに、旧日本海軍の海軍大将、山本五十六の名言について書いておられました。「パワハラ(強い叱責)で部下を指導するほうが業績が上がると勘違いをしている管理職が多いです。部下を褒めることは、お世辞を言ったり、へつらったりすることになるので、それでは業績は上がらないと言っている管理職社員もいました。でも、部下を褒めることは、お世辞を言うことでも、こびへつらうことでもありません。人を育てるときに欠かせない、心の栄養のようなものなのです。

ところで、山本五十六の名言があります。『やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず』この山本の言葉は、『褒める』、『認める』、『感謝する』、この3つの心の栄養で人を育てることの大切さを教えている、史上最強の名言だと私は思っています」というものです。

この藤咲さんのお考えは、私もその通りだと思いますし、ほとんどの方も同様にお考えだと思います。しかしながら、いまだに多くの職場では、パワハラはなかなかなくなりません。しかも、山本五十六は、明治生まれの軍人であり、厳しい上下関係の中で部下たちを指導していたであろうことは、容易に想像がつきます。

そういう山本でさえ、ほめることが大切だと言っているわけですから、令和時代は、なおさらほめることが大切です。それにもかかわらず、「部下を褒めることは部下を甘やかすことであり、会社のためにならない」と考える人が少なくないということを、私はずっと不思議に思っていました。そこで、なぜ、そういう人がなかなか減らないのかということについて、私は、ひとつの仮説を持っています。

それは、「部下を褒めることは部下を甘やかす」というのは、本当は、「自分は部下を上手に育成する方法を知らないので、部下を厳しく指導することしかできない」ということなのではないかということです。というのも、日本では、部下の育成方法に関心を持つ経営者の方は、かつてよりは増えてきているものの、いまだに、「人材育成よりも、目の前の業績を上げることの方が先」という状況の会社の方が多いのではないかと思います。

少し話が飛躍しますが、令和時代の事業の優劣は、何を売るかよりもどうやって売るかで決まるのであり、そうであれば、どうやって売るかの優劣は、人材育成の巧緻で決まることになります。でも、日本の経営者(管理者)は、部下を育てることの大切さを認識していなかったり、または、部下を育てるスキルを身に着けていなかったりするため、「とにかく、業績をあげろ」としか言えない、すなわち、パワハラが起きやすい状況にあるのだと思います。

でも、いまは、「何を売るか」ではなく、「どうやって売るか」で事業の優劣が決まる、すなわち、人材育成の巧緻が事業の成否に直結しているということに気づくことができれば、パワハラは起きないと、私は考えています。この仮説は、まだ、100%証明できる客観的な証拠はありませんが、こんご、事例をたくさん集めながら、「パワハラが起きる会社は業績もよくない会社」ということを、証明できるようにしていきたいと思っています。

 

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