[要旨]
経営者の方が、不採算な取引を受けてしまい、そのしわ寄せが従業員に向けられるのであれば、本末転倒になります。不採算な取引を受けることを避けるためにも、従業員の方を大切にする考え方を持つことが望まれます。
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前回、不採算な取引を受けないようにする方法として、自社の業績を月次で把握しておくというものをお伝えしました。この不採算な取引を断ることに関して、これとは別の観点から、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんが、メールマガジンで述べておられましたので、今回は、それについてご紹介します。
「ある大手スーパーより撤退するとき、『鍵山さん、あんたの会社はつぶれるよ、わかってんの』と言われたので、『はい、あなたの会社からいじめられてつぶれるより、社員みんなで努力して、そのうえでつぶれたほうがまだましです』とお答えしました。私の『取引の判断基準』は、その取引を続けることによって、社員が幸せになれるかどうかだからです」このような鍵山さんの考え方は、頭では理解できても、実践することはなかなかむずかしいことも少なくないと、私も考えています。
現在は改善されましたが、かつて、大手運送会社が、大手通信販売会社から、採算の悪い取引を受けていたことが問題となったことがあります。その会社では、従業員の方が酷使され、残業代が支払われない時間まで働いて仕事をこなしていたようです。でも、そのような状況は、コンプライアンスの観点から問題であるし、その運送会社は、社会的な批判を受けました。そこで、その大手運送会社は通信販売会社と取引条件の改善を折衝してそれを受け入れてもらい、また、重魚員の方にも未払残業代も支払ったようです。
繰り返しになりますが、受注相手の会社から、「この条件で受けてもらえなければ、もう、あなたの会社には発注しません」と言われると、「それは待って欲しい」と言いたくなる経営者の方の気持ちは理解できます。でも、その結果、そのしわ寄せが従業員に行くのであれば、賢明でない判断であることは、前述の通りです。経営者の方は、難しい判断を迫られる場面に立たされることが、しばしば起きると思いますが、正しい判断を行うためにも、鍵山さんのような考え方を持つことは有用であると、私は考えています。