鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不採算な取引をどうやって断るか

[要旨]

不採算な仕事を受けることは、会社にとって収益状況を悪化させます。そこで、それを防ぐための、「無理な依頼は受けない」という「覚悟」を維持することが大切ですが、そのためには、毎月、自社の収益状況を確認することで、その覚悟を維持しやすくなります。


[本文]

前々回、私は、事業改善のご支援のご依頼があったとき、その依頼をしてきた経営者の方の依存心の強い時は、お断りしているということを書きました。そのことで思い出したのですが、ご支援のご依頼を断るということは、私が独立したばかりのころは、なかなかできませんでした。

専門家として、困っている方からのご支援を断ることは、道義的に問題があると感じたからです。しかし、依存心の強い経営者の方は、自らはあまり努力しようとせず、専門家に面倒なことを押し付け、さらに、事業が改善しなければ、「いままでに支払った報酬は無駄だった」などという不満を言われながら、ご支援を打ち切られるということになりがちです。

もちろん、専門家側の能力が十分とは言えない部分もありますが、これは、前々回も述べた通り、改善活動の主体は事業者側が行うものであり、経営者の方の依存心が強くて当事者意識がなければ、事業は改善しません。そこで、私は、依存心の強い方からのご支援のご依頼は、お受けしてもよい関係を築くことが見込めないことから、心苦しくても断るようにしています。

ここまでは、私の愚痴のような内容になりましたが、依頼する側も、実は、心得ていて、気の弱そうな相手を見つけて、難題を押し付けようとしている節があります。私が銀行に勤務していたときにも経験があるのですが、銀行に無理な依頼をしてくる経営者の方は、銀行が依頼を受けることを渋ると、それを予め想定したように、「それなら別の銀行に頼んでくる」などと、少し脅迫めいたことを述べ、要求をのませようとします。

もちろん、そのような経営者の要求がエスカレートすると、最後には、「それでは別の銀行さんに融資をしていただいてください」とお断りするのですが、そのような返答をされた会社は、「別の銀行」にも融資を断られることが多いようです。話を戻すと、繰り返しになりますが、(見込)顧客であっても、よい関係を築くことができそうになければ、依頼を受けるよりも、断ることの方が得策です。

しかし、問題なのは、それは分かっていても、断ることの心理的なハードルはかなり高いということも理解できます。私が事業改善のご支援をしている会社の経営者の方の中には、採算が低い仕事を受けてしまう方が少なくありません。そこで、「無理な依頼は受けない」という「覚悟」を持つことが大切になるのですが、その覚悟を維持する方法のひとつは、毎月、自社の収益状況を確認することだと思います。

依頼主のところに行って、採算の悪い仕事を頼まれそうになったとき、「1社くらいは引き受けても大丈夫」、「もし、これを断れば、次の仕事が来ない」、「仕事を断ると、そのことを触れ回られるかもしれない」という迷いが出ますが、月間の収益が計画値に至っていなかったり、赤字であったりした場合は、そのような迷いを断ち切ることが、より、容易になるでしょう。

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