鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業化とは何か

今回の記事のタイトルは、ちょっと大袈裟

なものになっているのですが、私のコンサ

ルティングの経験から感じたことを述べた

いと思います。


私は、かつて、農業法人の事業改善のお手

伝いをしたことがありました。


もちろん、その会社の事業は、野菜を栽培

して販売することです。


そして、私がお手伝いをしていたとき、利

益を増やすために、レストランチェーンや

大手小売店など、青果市場よりも野菜を高

く買ってくれる相手に、直接販売すること

を検討していました。


でも、そのような顧客には、一定の取引条

件があり、その条件を受け入れることが難

しかったため、なかなか取引を始めるまで

には至りませんでした。


その取引条件とは、継続的に一定の数量を

納品するという条件です。


これは、買う側からすれば当然の要求なの

ですが、野菜を栽培する側からはこの条件

を受け入れることは容易なことではありま

せん。


なぜなら、野菜は、天候不良、病気、手入

れの不行き届きなどで、歩留まり率(栽培

した野菜のうち、出荷できる野菜の割合)

はあまり高くありません。


ちょっと油断すると、畑全体の野菜が出荷

できなくなることもあります。


大規模な農業法人は、いくつもの畑を持っ

ている(または、借りている)ので、栽培

する場所や時期をずらすことで、安定供給

ができなくなるリスクを減らすことができ

ますが、小規模な農業法人は、そのような

対応はできず、直接販売は諦め、青果市場

へ納品することしかできませんでした。


青果市場は、直接販売とは異なり、出荷す

る側の任意のタイミングで任意の量を買っ

てもらえますが、価格は直接販売よりも安

くなります。


要は、単に野菜を作るだけでは思うような

事業を営めず、小規模な事業であれば、消

費者との中継ぎを青果市場に頼らざるを得

ないわけです。


すなわち、自社の生産した野菜の販売を、

自社単独では行うことができず、市場に依

存するしかないという、独立した事業とは

あまり言い難い状況になっていました。


このように、事業とは、生産するだけでは

成り立たず、売れる仕組みも持っていなけ

ればならないということを、私がお手伝い

した農業法人の課題を見て実感しました。


ここまで述べて来たことは、ほとんどの人

があたりまえと感じることと思いますが、

私が、これまで起業しようとしている方と

お話をしていて、「あなたの会社のお客さ

まは、なぜ、あなたの会社から商品を買お

うとするのか、その理由はどういうもので

あるとお考えになりますか」という質問を

したとき、これに答えられる方は意外と多

くありませんでした。


そのような方は、会社を設立し、製品を製

造したり、商品を仕入れたりしさえすれ

ば、顧客が製品や商品を買ってくれると思

い込んでいるようです。


確かに生産や購買は事業の一部ですが、生

産や購買しただけでは販売にはつながらな

い、すなわち、事業はまわりません。


事業を「しくみ」ととらえ、しくみがなぜ

まわるのかを検討してからでないと、起業

しても失敗してしまう可能性が高くなるで

しょう。

 

 

 

 

 

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