日本マクドナルド、とんかつ新宿さぼてん
のOBで、経営コンサルタントの松下雅憲
さんのご著書、「店長のための『スタッフ
が辞めないお店』の作り方」
( https://amzn.to/2LO6SNZ )を拝読しま
した。
同書は、飲食店の現場に長い松下さんのご
経験から、どうすればスタッフを定着させ
ることができるかというノウハウが、豊富
に、かつ、体系的に解説されています。
その中で、私が最も注目したことは、従業
員満足度と顧客満足度の罠です。
私は、現在は、従業員満足度(ES)が高
くなければ、顧客満足度(CS)は高くな
らず、CSが高くなければ売上も利益も増
えないと考えています。
一方で、飲食店(に限りませんが)の現場
では、CSは大切かもしれないがもうけの
方が先だとか、CSだけでなくESも高め
なければならないということになると店長
の負担が増えるだけだ、という誤解が多い
と私は感じています。
すなわち、利益以外にも、CSやESとい
う目標が増えるのは非効率と誤解している
人が多いということです。
本来は、利益を得るためには、CSを高め
る必要があり、CSを高めるにはESを高
める必要がある、すなわち、CSとESは
最終的な目標である利益を得るための過程
なのですが、このように理解している人は
意外と少ないようです。
そのような誤解が広まっている原因にはさ
まざまなものがあると思いますが、松下さ
んは、その原因のひとつとして、「ESと
CSの罠」について説明しておられます。
松下さんは「ES向上→CS向上→売上増
加」という考え方は間違っていないが、勘
違いもしやすいと述べておられます。
なぜなら、「ES向上だけではCSは向上
せず、CSを向上させるだけでは売上は増
えない」からだそうです。
そこで、「CS向上がES向上になるよう
に仕掛け、売上増加がCS向上の証拠にな
るように仕掛ける」ようにするとよいそう
です。
その例として、松下さんは、ある居酒屋の
事例を紹介しています。
その居酒屋では、CS向上のために「90
分飲み放題」を利用している顧客に、コッ
プの中が空になったらお代わりを薦めると
いう作戦を実施したそうです。
こうすることでCSが向上し、リピート利
用につながり、売上が増えると店長は考え
たそうです。
しかし、その作戦によって売上は増えたも
のの、提供する飲み物の量も増えたため、
利益の増加にはつながらなかったそうで
す。
そこで、お代わりを薦めるときは、「当店
のハイボールはお薦めですよ!」と提案し
て、ビールより原価の低いハイボールの注
文を増やしたり、「そろそろ飲み放題の時
間が終わりますが、お得な30分の延長は
いかがですか」と、延長を薦めた結果、売
上とともに利益も増加しました。
もちろん、自分たちの作戦が奏功すれば、
スタッフの満足度も高まります。
このように、利益、ES、CSを同時に
達成できるような仕掛けを作ることが大
切と松下さんは述べておられます。
なお、松下さんは直接は触れていません
が、ESの高い職場ではスタッフの定着
率が高まるので、採用や育成の負担が減
り、利益の増加に寄与します。
一見、ESとCSの向上は負担と感じま
すが、松下さんのご指摘のように、上手
な仕掛けがあれば、ES向上→CS向上
→利益増加という好循環を生み出すこと
ができるということが、松下さんのご著
書でよく理解できました。
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