鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

付加価値にこだわる

会社の赤字の原因の多くは、粗利益(≒付

加価値)が少ないことです。


(ちなみに、粗利益の少なさ以外で赤字に

なる原因としては、過剰設備、不良在庫の

発生、回収不能債権をかかえるというもの

があります)


仕入れた商品に、十分な付加価値を加えた

金額で販売ができなければ、人件費、設備

費などの固定的な経費に充てることができ

ずに、事業は赤字になります。


これは会計的な観点ですが、経営的な観点

からは、赤字の事業は顧客から価値が少な

い商品を提供している事業と判断されてい

ることであり、それは意味のない事業とい

うことができます。


そして、このような事業を営んでいる経営

者の多くは、「競争が厳しいので、この価

格でしか商品を売れない」という言葉を口

にします。


これは、その会社がおかれている経営環境

を伝えているとは思うのですが、私は、そ

れはあまり意味のない言葉であると思って

います。


ここからは、上から目線のように思われる

ことをご容赦いただきたいのですが、経営

環境が厳しい中で事業を行っている限りで

は、消耗戦になってしまうことは至極当然

です。


だから、「競争が厳しいので、この価格で

しか商品を売れない」という説明は事実な

のですが、この言葉からは改善の手がかり

はほとんど得られません。


ただし、ひとつだけ得られる手がかりがが

あり、それは、血みどろの戦いが行われて

いるレッドオーシャンから、競争相手のい

ないブルーオーシャンに、自社の事業を移

すということです。


すなわち、事業展開する場所(顧客、商

品など)を変えるということです。


それをしないで、「競争が厳しいので、こ

の価格でしか商品を売れない」と口にする

ことしかしないのであれば、事業はますま

す先細っていくだけです。


とはいえ、「レッドオーシャンからブルー

オーシャンに移ることは、口で言うほどや

さしくない」と考える方が圧倒的に多いと

思います。


正直、私もそう思っています。


ただし、事業の場所を変えるといっても、

お店を隣町に移すというような物理的な移

転や、商品を変えるといっても、酒店がコ

ンビニエンスストアに変わるというような

業種の変更だけではありません。


たとえば、以前もご紹介しましたが、プロ

野球チームの横浜DeNAは、従来は、売

上をあげるには、試合に勝つことと考えて

いたものの、球場で応援を楽しんでもらう

ことでファン(顧客)の満足は高まると考

えて、球場の座席をチームカラーにする、

グラウンドにせりだしたエキサイティング

シートを設けるといった工夫を行ったこと

で、チームの成績は5~6位であっても

単年度黒字にしたという例もあります。


すなわち、プロ野球球団という事業であり

ながら、「商品」の定義を、「試合に勝つ

こと」から、「ファンに応援を楽しんでも

らうこと」に変えることで、事業領域をブ

ルーオーシャンに移すことができたと、私

は考えています。


(ご参考→ https://goo.gl/FiKUtH


もうひとつ例を挙げると、仙台市の郊外の

温泉で有名な秋保にある、スーパーマー

ケットの「主婦の店さいち」では、店舗面

積約80坪だけで、年間約6億円を売り上

げており、1日約5,000個売れている

おはぎだけで、その売上の約半分を占めて

いるそうです。


業種としてはスーパーマーケットなのです

が、なぜ、このお店が約6億円の年商があ

るかといえば、おはぎなどの総菜の作り方

や、それを製造するパートの主婦の教育法

です。


このお店では、ライバルは「家庭の味」と

考えており、いわゆる「既製品」でない味

を求める人たちに支持されています。


(ご参考→ https://goo.gl/BFoYtn


ここまで例を2つ示しましたが、話を戻す

と、「競争が厳しいので、この価格でしか

商品を売れない」という状況であれば、付

加価値を認めてもらえる事業を行うべきで

あり、それは、必ずしも、設備の新調や、

場所の移転など、物理的な変更をともなわ

ないで行うこともできるということです。


そして、実は、これも口で言うほどやさし

いことではありません。


詳細は割愛しますが、事業にたずさわる人

たちの考え方を変えたり、スキルを高めた

りすることの方が、いわゆる業種転換など

よりずっと難しいでしょう。


だからこそ、そこに経営者の手腕が問われ

ていると私は考えています。

 

 

 

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(注:写真と本文は関係ありません)