鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

貸借対照表は連続している

簿記を習った人には常識なのですが、貸借

対照表は連続しているということは、意外

と知られていないようです。


ここで、わざわざ、「貸借対照表が連続し

ている」と述べているということは、損益

計算書は連続していないということでもあ

ります。


損益計算書は、会計期間の最初の日に、前

期の数値は引き継がずに、すべての科目の

残高が0になり、その日から改めて、収益

と費用の科目の金額が会計期間の末日まで

積み上げられて行きます。


そこで、損益計算書には、欄外に「自●●

年●●月●●日~至〇〇年〇〇月〇〇日」

と、それぞれの科目の積み上げられた期間

が示されています。


そして、決算日には、収益の科目の金額の

合計額と、費用の科目の合計額の差額が計

算され、それが次期繰越金として、貸借対

照表の純資産の部に加えられます。


(その会計期間が赤字の時は、次期繰越金

がマイナスになり、その分が、純資産の部

から減額されます)


一方、貸借対照表は、会計期間の最初の日

に、すべての科目が、前期の数値を引き継

ぎます。


そして、すべての科目に、会計期間中の増

加や減少が反映されたものが、決算日にそ

の期の貸借対照表となります。


貸借対照表の数字は、期間中の増減が反映

されているとはいえ、決算日時点の会社の

資産などの状態を表しているため、欄外に

は、「〇〇年〇〇月〇〇日」と、決算日の

日付「のみ」が示されるところが、損益計

算書と対照的です。


ここまでの説明は、会社のもうけは、毎期

数値がリセットされる損益計算書で計算さ

れ、そのもうけは、前期の数値を引き継ぐ

貸借対照表に加えられるということの説明

でした。


すなわち、貸借対照表が示す会社の資産

は、毎期毎期大きくなっていくということ

です。

(会社が赤字の場合は、貸借対照表は、逆

に小さくなります)


ここで、やっと本題に入ります。


私が銀行で働いていたときに、融資先から

決算書をいただいたときに、最初に確認す

ることは、前回いただいた決算書と、今回

いただいた決算書が連続しているかという

ことです。


正確さを犠牲にして、分かりやすく書け

ば、損益計算書の今期の利益を、前期の純

資産の部に加えた金額が、今期の純資産の

部の金額になっているかということを確認

します。


これは、前述の説明から見れば、そうなる

ことは当たり前なのですが、金額が合わな

い決算書を何度か見ることがありました。


そのような決算書を見た時は、会社の方に

その旨をお伝えして、正しいものを提出す

るようにお願いします。


また、金額が合わない決算書をその場で気

づかずに、後になって気づくと、上司に叱

られてしまいます。


ちなみに、なぜ金額が合わない決算書が作

成されるのかというと、それは、粉飾をし

ているからです。


具体的には、繰越損失(繰越利益がマイナ

スになっている状態)のある会社が、その

繰越損失を減らし、その分、何らかの実態

のない資産を増やします。


ただ、ここで、どうして銀行に分かってし

まうような粉飾が行われるのだろうとお考

えになる方が多いと思います。


これは、私は直接確かめたことはないので

すが、複数の方から聞いた話を総合する

と、税理士の方が顧問先の社長に詳しいこ

とは知らせずに、銀行から融資を受けやす

い決算書にしようとして、繰越損失を減ら

すという、よくない「気遣い」をしている

ということのようです。


このようなことをする税理士の方は極一部

だと私は考えていますが、この程度の粉飾

では銀行にはわからないだろうと考えてい

る方もいらっしゃるようです。


誰がなぜ連続しない貸借対照表を作るのか

ということはさておき、経営者の方は、ぜ

ひ、いちど自社の貸借対照表が連続してい

るということを確かめてみることをお薦め

します。


このような確認をすることは、会計に関心

を持つためのひとつのきっかけになると私

は考えています。

 

 

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