[要旨]
顧客がものを買う時代ではなく、ことを買う時代になった現在は、競争は、同業他社ではなく、異なる業種の会社と起きるようになっています。セブンイレブンでは、手軽に食事を済ませるという顧客体験価値を実現していますが、それは、ファミリーレストランうやファストフード店との競合する状態となっています。
[本文]
今回も、前回に引き続き、鈴木敏文さんのご著書、「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回、鈴木さんが、米国のセブンイレブンの事業再生をするにあたり、「真の競争相手は、同業他社ではなく、絶えず変化するお客様のニーズである」と考え、常に変化に対応することが大切であるというご指摘をしたことについて紹介しました。これに関し、鈴木さんは、さらに、異業種間競争を意識することが大切であるとご指摘しておられます。
「もはや、競争は1つの業界や業態の中だけでなく、まったくの異なる業種から、突然、競争相手が現れ、出自の異なる企業や商品・サービスを競い合う時代になっています。このことを、早稲田大学ビジネススクール教授で、長年、外資系コンサルティング会社の、ボストンコンサルティング・グループで、経営コンサルタントをされてきた、内田和成さんは、「異業種間競争」と呼んでいます。(中略)内田さんによれば、コンビニこそ、異業種間競争の先鞭をつけた存在だといいます。コンビニが普及した結果、若い人たちは、飲食店やレストランに行かず、コンビニのお弁当で手軽に食事をすませるライフスタイルが定着した、この点をとらえれば、外食事業とコンビニ事業が異業種間競争を展開していることになるとうわけです。
また、最近、異業種間競争を生み出している、最も典型的な例として、スマートフォンがあります。朝、出勤時の電車内を見渡しても、新聞を読んでいる人は非常に少なくなり、その一方で、多くの人がスマホの画面を見ています。(中略)セブン-イレブンにしても、セブンカフェの導入により、手軽に上質なコーヒーをコンビニで購入するという、新しい生活習慣を生み出し、『日本一コーヒーを販売する店』になりました。コーヒーショップ業界から見れば、突然、コンビニ業界から競争相手が出現したことになるでしょう」(125ページ)
現在は、すでに、「もの」を消費する時代から、「こと」を消費する時代に移っているということから考えれば、同じ「もの」を提供する同業者をライバルととらえることは適切ではなく、業種に関係なく、同じ「こと」を提供する会社をライバルととらえなければならないということは、容易に理解できることです。しかしながら、今でも、ライバルは同業者と考えてしまいがちであり、そう考えている間は、適切な顧客体験価値を創り出すこともできなくなります。
ちなみに、コロナ禍にあっても、業績を伸ばしているアパホテルは、石川県の信用金庫OBの元谷外志雄さんと、福井県の信用金庫OGの元谷芙美子さんが創業しています。同社が業績を伸ばしているのは、宿泊業というサービスだけに目をとらわれにくい、宿泊業以外の事業から参入した人が経営者について、顧客体験価値を創り出しているからだと思います。
2022/11/8 No.2155