[要旨]
単に、業種選定を後に行いさえすればよいということは言えないものの、業種を先に決めてしまうと、市場への対応が限定される会社が多くなっており、Amazonやアパホテルのように、業種を後から決めることで、市場のニーズに的確に応えることができる会社が増えています。
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スタートアップを支援する事業を営む、ユニコーンファームの社長の、田所雅之が、ダイヤモンドオンラインに、Amazonの起業の経緯について書いていました。Amazonといえば、米国のIT企業大手、GAFAのうちのひとつです。そのAmazonは、ジェフ・ベゾスが、1994年に創業していますが、ベゾスはヘッジファンド出身で、書店販売については、経験がなかったということも、よく知られています。でも、ベゾスがAmazonで書籍の販売を始めることにしたのは、本は規格が決まっていて管理しやすく、食品と違って在庫を抱えても腐らないなどの理由からのようです。
要は、ベゾスは、ネット販売が普及することを見越して事業を始めたわけですが、どの業種にするか、すなわち、書店を営むということは、後から決まったということです。このように、営む事業をどの業種にするかということも選択の範囲に入っていれば、会社の事業を、より収益性の高い事業にすることができるということは明らかです。でも、このような例は徐々に増えているとはいえ、日本では、業種が決まっていて、後から戦略を選択する会社が圧倒的に多いと思います。
だからといって、業種が先に決まっていた会社は業績が悪いのかというと、直ちにはそのようには言えませんが、最近の業績のよい会社は、業種が後から決まった会社が増えていることも事実だと思います。例えば、コロナ禍で減収減益となったものの、黒字を維持し、現在も事業を拡大しているアパホテルを見ると、創業者の元谷氏は信用金庫出身で、独立後、建設業を経てホテル事業を始めています。
このアパホテルは、業種としては宿泊業ではあるものの、従来の宿泊業の観念にとらわれないカテゴリーを切り開いていることが、業績を伸ばしている要因であり、この点はAmazonと重なる部分があると思います。繰り返しになりますが、単に、業種選定を後に行いさえすればよいということは言えないものの、業種を先に決めてしまうと、市場への対応が限定される会社が多くなっていると、私は考えています。