鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

売上目標をなくしたら売上が3倍に

[要旨]

飯田屋では、売上目標やノルマなどをなくしたところ、11年間で売上が3倍になり、また、赤字を脱し、史上最高の黒字になったそうです。これは、自社のドメインを、料理道具の販売ではなく、顧客の課題を解決するという定義を行ったことによると考えることができます。


[本文]

今回も、かっぱ橋道具街の料理道具専門店の飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を読んで、私が注目したことについて述べたいと思います。飯田屋では、3つの「やらないこと」を決めたそうです。すなわち、(1)料理道具以外の品揃え、(2)価格競争、(3)売上目標やノルマをなくしたそうです。さらに、飯田屋には、会議もマニュアルもないそうです。

すなわち、同社では、従業員の自主性が武器になっているようです。その結果、飯田さんが社長に就任した2009年から、2020年の11年間で、飯田屋の売上高は3倍になったそうです。利益も、2009年時点では数百万円の赤字の状態から、2020年は同社史上最高の黒字となったそうです。では、飯田屋以外の別の会社でも、品揃えを絞り、値引きはせず、売上目標をなくせば、売上は増えるのでしょうか?

残念ながら、私は、多くの会社は、飯田屋のようにはならないと考えています。なぜなら、飯田さんは、「3つのやらないことを決めた」という言い回しをしていますが、実際には、「困っている顧客の課題を解決するための支援をする」ことで、付加価値の高い商品を販売している、すなわち、ソリューション提供型ビジネスを実践しているからです。これを実践するためには、職場環境を整備し、従業員のスキルやモラールを高めることから始めなければなりません。

とはいえ、私は、ここで、「ソリューション提供型ビジネスを実践しなければ、事業は成功しない」ということを述べようとは考えていません。私が、コンサルタントとして、事業改善のご相談を受ける中で、「事業の改善の方法が見つからない」ということに悩んでいる経営者の方に、よく、お会いするのですが、実は、それは事実と異なると感じています。

なぜなら、そのような会社では、飯田さんのような、ソリューション提供型ビジネスを実践している会社は、あまり多くないからです。別の言い方をすれば、「もの」ばかりを売ろうとしていて、「こと」を提供しようとする会社は少ないということです。でも、21世紀のものがあふれている時代では、「もの」だけを売ろうとすることは、レッドオーシャンの中で競争しようとするようなものです。

でも、「こと(課題解決)」を欲している潜在顧客はたくさん存在しており、だからこそ、飯田屋は、業績を伸ばしているのでしょう。そこで、いま、事業がなかなかうまくいっていないという経営者の方は、まず、実際にソリューション提供型ビジネスを実践できるかどうかを考える前に、21世紀型のビジネスとはどういうことかということから、考えてみてはどうでしょうか?そして、飯田さんのご著書を読むことで、そのよいきっかけになるのではないかと、私は考えています。

2021/12/23 No.1835

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