鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社会貢献と成長の両方を達成する会社

[要旨]

かつては、社会性を犠牲にしなければ、自社の利益は得られないと考える会社が多く存在しましたが、現在は、社会問題を解決する製品を解決することが、すなわち、CSV経営の実践が、自社の事業の競争力を高め、収益機会を増大することになると言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、藤野英人さんのご著書、「5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす儲かる会社つぶれる会社の法則」を読んで、私が気づいたことについて書きたいと思います。同書の中で、藤野さんは、事業活動における社会貢献の大切さについて述べておられます。「『良い会社』とひとくちに言っても、その定義は一様ではありません。ある人にとっては『株価が上昇する会社』が良い会社かもしれませんし、『社会のために役立っている会社』、『従業員に報いる会社』、『お客様にすばらしい商品やサービスを提供する会社』、『成長している会社』、『税金を払う会社』など、良い会社かどうかを見る視点はたくさん考えられるでしょう。

こうした視点はどれも”正解”ですが、条件を大別するとすれば、『社会貢献(会社の社会的な役割を果たすこと)』と、『成長(売上と利益の成長)』の両方をバランスよく達成していることが重要です。日本では、利益を上げること、企業が社会の中でその役割を果たして社会貢献するということに対して、不真面目な会社が多いと、私は思っています。利益を追求し、儲けを得ることは、『汚いこと』、『社会性を犠牲にしなければできないこと』だと感じ、社会貢献というと、『慈善活動や環境保護をやればいいのだろう』と、安易に考える経営者がたくさんいるのです。

しかし、企業は真面目にビジネスをして、社会の中で役割を果たしてこそ、収益を上げることができます。本業での社会貢献と企業の成長は、直結しているのです。米ハーバード大学経営大学院の、マイケル・ポーター教授は、企業が社会的意義を考えてビジネスを真面目にやることそのものが社会貢献であるということをおっしゃっていますが、こうした考え方は世界で主流になりつつあると言っていいでしょう」(178ページ)藤野さんは、ポーター教授の提唱した、CSV(Creating Shared Value、共有価値の創造)経営を推奨しておられますが、私も、これからはこの考え方は重要だと考えています。

その一方で、これも藤野さんが指摘しておられますが、「社会性を犠牲にしなければ利益を得ることができない」と考えている経営者の方が、まだ、少なくないと思います。しかし、現在は、自社だけが儲かればよいという時代ではなくなっています。というのも、どの会社でも、品質の高い商品を、低価格で提供できる時代になっており、どうすれば価値を認めてもらえるかというと、社会問題を解決するかどうかという部分に比重が高まっているからです。それを実現することにより、結果として自社の収益機会も増大することになります。

例えば、キリンは、ノンアルコールビールを、ビールの代替品としてではなく、ビールと同様のリフレッシュできる飲料で、かつ、健康を維持できる飲料として提供することで、ヒット商品を生み出しています。すなわち、CSV経営は、利益を生み出し、かつ、社会問題を解決するという、難易度の高い経営手法と考えず、社会問題を解決する製品が競争力が高く、それを開発することが自社の収益機会を増大する方法としてとらえると、着手しやすく、かつ、比較的短期間にCSV経営を実践できるようになると考えています。

2022/8/23 No.2078