[要旨]
大企業の役員は、数百人に1人しか就くことができないことから、「ハイパフォーマー」の集団であるとも言えます。しかし、そのような人たちは、能力が高いという自負があり、他の役員や社長の意見に耳を貸そうとしない結果、組織的な活動が行われにくい面があります。そこで、経営トップは、そのような人たちに対し、組織的な活動をしてもらうよう働きかける重要な役割があります。
[本文]
エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を拝読しました。「自我の強い、ハイパフォーマーの集団を、『チーム』にすることは、簡単ではありません。サッカーでたとえるなら、『どうすれば、本田圭佑ばかりの集団をチームにできるか?』ということだと思います。企業の場合は、経理・財務、品質管理、法務・コンプライアンスなど、どちらかと言えば、守りを固める役割の人がいます。一方で、企業、技術開発、マーケティングなど、攻めの役割があったりします。
ですから、役割は分化していて、チームにはバランスが存在するように思えるかもしれません。しかし、役割がどうであったとしても、やはり、強い自負と責任感、そして、”選ばれた”という意識を、多くの役員が持っています。ですから、簡単に、他の役員の意見に、時には社長の意見にも、なびいたりはしません。表向きはどのように見せていたとしても、内側ではそんなに簡単になびいてはいない、なんといっても、0.25%のひとたちですから、内側は、みんなどこか、”本田圭佑”なのですから」(34ページ)
鈴木さんは、大企業では、400人に1人の割合でしか役員になれないと推定しておられ、それが、「0.25%の人たち」ということです。数値自体は正確ではないかもしれませんが、大企業の役員に就けるのは、数百人の同僚から1人だけということは間違いないでしょう。そして、問題なのは、そのような人は、”本田圭佑”のような人たちであることから、そのような人で構成される集団は、「チーム」には、なかなかなることができないということを、鈴木さんは指摘しています。
ここで、鈴木さんのいう「チーム」とは、単に、人が集まっただけの集団ではなく、組織的活動ができる組織を指しているようです。そして、この本のテーマは、どうすれば”本田圭佑”のような人たちが組織的活動ができるようになるかということなのです。確かに、ハイパフォーマーが、お互いに出世争いをして足を引っ張り合うのではなく、協力し合って組織的活動ができれば、その成果は大きなものとなることは容易に理解できます。したがって、経営者の方は、単に、意思決定をしたり、それを伝えたり、指示を出したりすることよりも、能力の高い人たちの集団を「チーム」にするための働きかけの方に比重を置くことが大切になると、私は考えています。では、「チーム」をつくるにはどうすればよいのかということについては、次回以降、説明したいと思います。
2022/8/24 No.2079