鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

あなたはまだ自分に指を向けていない

[要旨]

事業活動を行う中で、課題があると、経営者は、その責任を、従業員にのみ向けてしまうことが、しばしば、起きます。しかし、職場環境や事業環境の管理は、経営者にあるのであり、経営者にできることがなかったのかという視点から、改善点を探ることが大切です。


[本文]

今回も、かっぱ橋道具街の料理道具専門店の飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を読んで、私が注目したことについて述べたいと思います。飯田さんは、その後、道具の選び方などをブログに書き続けていったところ、マスコミから飯田さんが注目されるようになっていったそうです。そして、飯田屋の知名度が向上したことから、売上が増えて行ったので、飯田さんは自社を「いい会社」だと感じるようになったそうです。ところが、ある時、従業員の半数の方が、いっせいに退職を申し出てきたそうです。

しかし、当初は、飯田さんは、その理由を理解できなかったそうです。そこで、飯田さんのお母さんに薦められ、「人と経営研究所」の所長の大久保寛司さんのセミナーを受けたそうです。そして、飯田さんは、セミナー中に大久保さんから言われた、「あなたはまだ自分に指を向けていない」という言葉が印象に残ったそうです。そう言われた飯田さんは、売上を伸ばすためという錦の御旗をかかげ、従業員を責め続けていたということに、気がついたそうです。

例えば、トイレにトイレットペーパーがセットされていなかったとき、飯田さんは、トイレ掃除の担当者を怒鳴りつけたことがあったそうです。しかし、それは、トイレ掃除中に、店頭に出ている別の従業員から、接客の支援の要請があり、掃除を中断したために、トイレットペーパーのセットがもれたのだそうです。すなわち、トイレットペーパーのセットのもれは、従業員数が少なかったことが真の原因であり、従業員だけを批判することは間違いだったということに、飯田さんは気づいたそうです。

このことも、飯田さんの例を見ると、容易に理解できることなのですが、私も含め、人は、不都合なことは他人の責任にしてしまいがちで、「自分に指を向ける」ことを実践することは、なかなかできないと思います。経営コンサルタント一倉定(故人)さんは、「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、社長の責任だ」という名言を残しておられますが、まず、会社で起きた課題は、経営者に原因がないかというところから出発することが大切だということを、飯田さんのご経験から、改めて感じました。

2021/12/18 No.1830

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