先日、たまたま、芸能人の方が俳句を
つくって、俳句の先生に添削を受ける
番組を見ていました。
番組では、梅沢富美男さんが
じょうずな俳句を作り、先生から
「普段からちゃんと勉強していないと、
こういう俳句はつくれない」と
褒められていました。
これを見て、稲盛和夫さんが
二ノ宮尊徳について述べていたことを
思い出しました。
稲盛さんによれば、二宮尊徳は
ある用件で城主から登城するよう
命じられ、城に入ったそうです。
もちろん、二宮尊徳は農家の生まれで
農民として育ってきたために、武家の
しきたりは習う機会はなかったにも
かかわらず、
登城した時の立ち居振る舞いは、
多くの武士の方が感心するほどで
あったということです。
すなわち、普段からの心構えが、
いざというときに、周りの人には
伝わるということです。
梅沢さんも、普段から俳句を勉強
していたために、わざわざ
アピールしなくても、それが
先生に伝わったということでしょう。
ということで、これは、ビジネスマン
にもあてはまることだと思います。
(もちろん私も含まれます。)
かつて、
私が事業改善のお手伝いのために
訪れた会社では、社屋に入った時、
従業員の方全員が、
一斉に立ち上がって、あいさつして
くださいました。
しかし、
あいさつして下さった方の多くは、
目をあわせることもなく、
あいさつがすんだら、
いそいそと自分の仕事を始めます。
すなわち、
来客を歓迎しているわけではなく、
来客があったらあいさつをするという、
単なる作業をしているだけということが
すぐに分かりました。
もちろん、まったくあいさつをしない
よりも、形式的にでもあいさつをする
方がよいでしょう。
でも、なぜあいさつをするのかという
ところまで、理解している人はあまり
いなかったようです。
この例のように、「来客があったら
全員で立ってあいさつをする」という
決まりを守ること、すなわち、
あいさつをしたかどうかという事実で
目的を遂げたかどうかを判断する
ことを、事実前提に基づく行動と
いいます。
すなわち、
規則を守ることさえすればよいと
いうことです。
でも、あいさつをするというのは、
顧客によろこんでもらい、自社の
お得意さまになってもらう、
ひいては、
自社の収益につなげるということが
最終的な目的でしょう。
よって、顧客にあいさつをする
ときは、顧客に満足をしてもらう
ために行うわけです。
この意味を理解したうえで、機械的
ではなく、心のこもったあいさつを
すれば、顧客はよりよい印象を持つ
ことでしょう。
このような、顧客に満足してもらおう
という価値観に基づく行動をする
ことを、価値前提の行動といいます。
ここで述べたことは、難しいことでは
なく、多くの方が賛同されること
でしょう。
しかしながら、
事実前提ではなく価値前提で従業員の
方に行動してもらうということは、
口で言うほど簡単ではありません。
梅沢さんのように、単に課題をこなす
ためだけに俳句を作るのではなく、
よりよい俳句を作るという価値観を
持って、そのためには、どう行動
すればよいかを自律的に考え、
そして自主的に勉強するというような
行動を、従業員の方にすりこむことは、
一朝一夕ではなかなかできません。
そこに、経営者としての能力が問われる
面があり、そして、そういった課題を
みごと乗り越えたできた会社こそ、
真に実力のある組織となるということを
述べたいと思います。