「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道
徳は寝言である」という格言は、江戸末期
の思想家、二宮尊徳の有名なことばです。
これは、私が解説するまでもありません
が、自分さえよければいいという姿勢で、
非道徳的な事業をしてはいけないし、いく
ら道徳的であっても、採算の得られない事
業は無意味だということです。
私が、今回、この言葉を取り上げたのは、
二宮尊徳が活躍した時代から、すでに
160年も過ぎているのに、いまだに通用
するものとなっているのはどうしてなのか
と疑問に思ったからです。
繰り返しになりますが、事業は道徳的でな
ければならないし、かといって、道徳だけ
を唱えれていればよいということではない
ことは、多くの方が理解しておられるで
しょう。
すなわち、事業は道徳を守るという条件の
もと、利益も得なければならないわけであ
り、このような難しい前提で成功させなけ
ればならないわけです。
しかし、事業を始めてから、「こんなはず
ではなかった」という状況に陥り、なりふ
り構わずに我田引水的な事業をしたり、ま
たは、道徳的に事業をしているということ
を口実にして、採算の得られないまま事業
を続けている方が少なくないということ
は、前述の通りです。
この、「こんなはずではなかった」という
ことを感じてしまう経営者の方が多いの
は、つまるところ、事業経営について、あ
まり深く検討することなく始めてしまうか
らだと思っています。
言い方を変えると、不正確かもしれません
が、二宮翁の言葉の「道徳」を、「人との
関係」に置き換えるとわかりやすくなるか
もしれません。
すなわち、「人との良好な関係のない事業
は罪悪であり、人と良好な関係があっても
不採算な事業は意味がない」ということで
す。
これは、私の勝手な解釈ですが、事業は組
織的(内部の組織だけでなく、顧客や仕入
先などの外部の組織も含む)な活動であ
り、独り善がりになっては事業はうまく行
かないということです。
ですから、事業は、組織的な活動を運営す
るスキルを経営者の方が持たなければ、う
まく行かないわけですが、このスキルの大
切さはまだ日本ではあまり認識されていな
いと、私は感じています。
もちろん、私は顧問先さまに対しては、こ
の組織的な活動を運営するスキルの大切さ
をお伝えし、それを経営者の方に身に付け
ていただくためのお手伝いをしています。
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