鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

第5水準のリーダーシップ

[要旨]

米国の経営コンサルタントのコリンズは、米国の700社を調査した結果、ビジョナリー・カンパニー(業界内で卓越した会社)の経営者に必要なのは、カリスマ的なリーダーシップではなく、控えめで謙虚なリーダーシップだということがわかったそうです。そして、そのようなリーダーシップは、カリスマ的なリーダーシップである第4水準のリーダーシップよりも上位の、第5水準のリーダーシップと呼んでいるそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、リーダーが日常的に取組んでいる問題には、大きく分けると、今までのやり方で解決できる問題と、変化を伴う解決が必要な問題がありますが、前者を扱うのがマネージャーの仕事で、後者を扱うのがリーダーの仕事であるということを説明しました。

これに続いて、岩田さんは、「第5水準のリーダーシップ」について述べておられます。「私が大好きな書籍に、『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)があります。優れた企業の本当の強さとは何か、を検証した本ですが、ここでもリーダーシップについて言及されています。多くの人々がイメージする、カリスマ的なリーダーも登場しますが、それは『第4水準』という書き方がされています。さらに、その上のリーダーとして、『第5水準』のリーダーがあるというのです。

カリスマ性の有無はまったく関係がない。むしろ、控えめで謙虚さを持っている。何かがうまくいったとしたら、『それは運が良かったからだ』、『部下が頑張ってくれたからだ』と受け止める。逆に、うまくいかなかったときには、『すべて自分の責任だ』と捉える。そうした謙虚な姿勢を持ち、人格的にも優れたリーダーを、『ビジョナリー・カンパニー2』では、『第5水準のリーダー』と定義しています。そこそこ良い企業が、ビジョナリーで偉大な企業に変革する変化点には、必ず、第5水準のリーダーが登場すると書かれています」(74ページ)

コリンズは、「ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則」を発表するにあたって、米国の700社のCEOからアンケートに答えてもらい、それらの会社の中から18社のビジョナリー・カンパニー(業界内で卓越した会社)を選出したそうです。さらに、それらのビジョナリー・カンパニーの創業時から現在までの社史を、6年にわたって調査し、超一流会社の経営者に必要なのは、第5水準のリーダーシップということがわかったそうです。

この第5水準のリーダーシップは、経営者や経営コンサルタントの間では知られていますが、まだ認知度はあまり高くないようです。というのも、やはり、カリスマ経営者は、社会的な認知度が高いので、カリスマ経営者がいる会社が、最も業績が高いという印象を持たれてしまうのかもしれません。そこで、若いビジネスパーソンの中にも、カリスマ経営者を目指そうとする人が少なくないのかもしれません。ただ、カリスマ経営者を目指すことが問題ではないとは思いませんが、カリスマ経営者よりも高い水準のリーダーシップがあるということも、忘れてはいけないと思います。

でも、謙虚な姿勢のリーダーシップが、卓越した会社をつくるということは、意外に感じられる面があるかもしれません。私は、第5水準のリーダーシップについては詳しく把握していないのですが、ただ、謙虚なリーダーのもとでは、部下たちは、のびのびと仕事ができ、自律的な活動が促されるため、業績も高まるのではないかと思います。そこで、これからさらに自社の業績を高めて行こうと考えている経営者の方は、第5水準のリーダーを目指すことを目標にしてはいかがでしょうか?

2024/4/9 No.2673