鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リーダーシップとは影響力の行使

[要旨]

ドラッカーは、リーダーシップを、「方向性を決め、目標を設定し、資源を配分し、人々を行動に移すこと」と定義しています。また、リーダーシップは、学ぶことができると主張もしており、「自己開示」、「自己省察」、「他者への関心」といった自己啓発的な活動を通じて、リーダーシップ能力を向上することができるとしています。すなわち、リーダーシップには、目的論的な側面だけでなく、人間的な側面が重要であるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、リーダーとは、フォロワーがいて存在する「ポジション」に過ぎませんが、一方、リーダーシップは、人を導くスキルであり、地位を得ることによって、自動的に発揮しうるものではないことから、リーダー自らが習得すべきものということを説明しました。

これに続いて、岩田さんは、リーダーシップの定義について述べておられます。「リーダーシップ論の第一人者、ウォレン・ベニスによると、リーダーシップの定義は850種類以上あるそうです。だから、唯一の正解があるのではなく、その時々の状況、リーダー自身の得意・不得意、それまでの経験などを踏まえた上で、その組織、及び、リーダーにとってふさわしいリーダーシップのスタイルを活用できることが理想です。リーダーシップは、フォロワーがいて初めて生まれます。

リーダーシップとは、リーダーの影響力の行使を言いますが、その影響力の与え方は、その人の人間性や状況によって変わります。場合によっては、権力を使って人に影響力を与えることもできますが、この場合は、一般的に、リーダーシップがあるとは言いません。(中略)また、部下が上司を説得して、行動を変えさせた場合も、上司に対して『リーダーシップ』を発揮したと言えます。この場合は、部下への信頼感があり、何よりもその意見が良かったからでしょう。(中略)リーダーシップを発揮するためには『信頼』という言葉がキーワードになります。

結局、『ついていきたいと思われるリーダー』は、信頼のおけるリーダーということです。(中略)ドラッカーは、リーダーシップを、『方向性を決め、目標を設定し、資源を配分し、人々を行動に移すこと』とも定義しています。また、リーダーシップは、学ぶことができると主張しており、『自己開示』、『自己省察』、『他者への関心』といった自己啓発的な活動を通じて、リーダーシップ能力を向上することができるとしています。リーダーシップには、目的論的な側面だけでなく、人間的な側面が重要であると強調しています」(48ページ)

リーダーシップの定義は850もあるということなので、これを明確化することは難しいと思われますが、とはいえ、岩田さんが述べておられるように、「リーダーシップを発揮するためには『信頼』という言葉がキーワードになる」ということについては間違いないと思います。だからこそ、ドラッカーも、「リーダーシップには、目的論的な側面だけでなく、人間的な側面が重要であると強調」しているのでしょう。このことは、ほとんどの方が容易にご理解されると思いますが、その一方で、それを実践している人はあまり多くないとも感じています。

例えば、自分の思いを実現したいと考え、会社勤務から独立して起業した方が、部下として雇い入れた人たちに対し、なかなか思い通りに働いてもらえず、苦心しているという例は珍しくありません。すなわち、「社長に就けば、部下を思い通りに指示できる」と思っていたところ、実際には、そううまく行かないということです。その原因はひとつだけではないと思いますが、大きな要因は、松田さんがご指摘しておられるように、社長と部下の間で強い信頼関係を結ぶことが難しいからではないかと思います。したがって、経営者になって成功したいと考えている方は、前述のように、単に、社長というポジションに就くだけでなく、人間性も高めていかなければなりません。

しかし、起業して社長になれば、リーダーシップを得られると考えてしまう人も、意外に多いように私は感じています。そして、この人間性を高めるという課題は、私自身にも当てはまります。私も、コンサルタントとして顧問先の会社の方に、自分の提案を受け容れてもらうためには強いリーダーシップを発揮しなければなりません。そこで、私自身もリーダーシップを高めるため、引き続き人間性も高めていかなければならないわけですので、引き続き、研鑽を重ねて行く所存です。

2024/4/6 No.2670