[要旨]
ソニーの元社長の平井一夫さんによれば、管理職の方たちに、「もし部下による選挙が行われたとしたら、自分が当選する自信がありますか?」と問いかけてきたそうです。というのは、部下からリーダーとして認められていない人がリーダーになると、事業が円滑に進まなくなり、業績が悪化してしまうことを避けるためです。したがって、経営者や幹部の方たちも、部下が投票したくなるリーダーを昇進させるよう、適切な評価を行う必要があります。
[本文]
今回も前回に引き続き、ソニーの元社長の平井一夫さんのご著書、「ソニー再生変革を成し遂げた『異端のリーダーシップ』」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、平井さんがソニーの米国法人の再建の際、幹部のリストラを自ら行ったそうですが、これは、経営者がつらい仕事から逃げると、部下たちがついてこなくなることが、その理由のひとつであるということを説明しました。これに続いて、平井さんは、リーダーは、部下から選ばれることを意識しなければならないということについて述べておられます。
「私は、よく、管理職の皆さんに、『もし部下による選挙が行われたとしよう。自分が当選する自信がありますか?』と問いかけてきた。もちろん、自分自身にも、である。ソニーは、ずっと、年功序列的な要素をなくそうとしてきた会社だが、それでもやはり長く同じ部門やチームに在籍した人が昇任するケースは多い。だからこそ、その部門を任された管理職、つまり、リーダーには、『はたして自分は部下から選ばれる存在だろうか』ということを常に意識し、自問してほしいと言ってきた。
もちろん、部下にこびろというわけではない。繰り返しになるが、リーダーにはつらい判断、人から嫌われる判断がつきものだ。そんな状況にあっても、自分はリーダーとして選ばれる存在なのかということを意識して行動しなければならないのだ。そして、リーダーは部下からの『票』を得なければならない。もし、厳しい局面で逃げるようなことをすれば、リーダーには票は集まらない。だから、リーダーは逃げる姿を見せてはいけないのだ」(86ページ)
平井さんがご指摘しておられるように、リーダーは、「部下による選挙で当選できるか」ということを、常に意識しなければならないということは、ほとんどの方が理解することだと思います。ところが、すべてではありませんが、現実にはそのようにならないことも少なくありません。即ち、上司にだけおもねるリーダーが出世してしまうこともあります。そして、そのようなリーダーのもとでは、部下たちの心が離れ、業績が下がってしまいます。したがって、経営者や幹部がリーダーを評価するときは、部下からの「票」を獲得できているかを見極めることが大切です。
ところが、これを正確に実践することも難しいということも現実です。また、部下に人気があるリーダーであっても、単に、部下を甘やかしているだけで、業績を向上させていない場合もあります。では、どのような方法で評価すればよいのかということについては、説明を割愛しますが、リーダーの評価と業績は密接な関係があり、だからこそ、経営者や幹部はリーダーの評価にしっかり向き合う必要があるということを、十分に理解して経営に臨む必要があります。
2023/6/24 No.2383