[要旨]
ミスターミニットの元社長の迫俊亮さんは、社長時代に、業績を回復させるためにはリーダーシップを強めなければならないので、さらに、そのために、従業員の方たち敬意を払うことに注力しました。そのため、迫さんが店舗に行った時、混みあっていて従業員の方とお話できそうにないときは、お話をせず、別の店にいくということなどを通して、迫さんの従業員の方への敬意を示していました。
[本文]
今回も、前回に引き続き、迫俊亮さんのご著書、「やる気を引き出し、人を動かすリーダーの現場力」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、迫さんが同社の社長時代、メンターの澤田貴司さんから、理論が正しいからと言って、必ずしも部下が指示に従うとは限らないと助言され、これに基づいて迫さんは、ご自身でリーダーシップについて考えた結果、「リーダーはフォロワーがいる存在」という概念を導いたということを説明しました。これに続いて、迫さんは、リーダーが「フォロワー」を増やすにはどうすればよいのかについて、説明しています。
「フォロワーを増やすにはどうすればいいか?相手から『信頼されよう』と気負う必要はない。こちらが、相手に敬意を持つだけでいい。しかし、その敬意は、決してブレてはならない。そこで、僕が意識したのは、『100%の敬意を100%形にする』ことだった。(中略)リーダーが腹の底から敬意を持っていると、自然と行動に表れる。例えば、店舗に出向いていても、お客さまがいるときや忙しそうなときには、絶対に声をかけないようにする。邪魔にならないよう、少し離れたところで待ち、お客様が途切れた瞬間に急いで向かう。
話す時間が取れたら、よっぽどのことがない限り、電話には出ず、メールも見ず、現場の声に集中する。しばらくお客様が途切れそうになければ、その日は諦めて次の店舗に向かうこともザラだ。現場にとってはいつでも来られる社長と話すより、一期一会のお客様とコミュニケーションを取ることの方に数百倍意味があるに決まっている。心からそう思っているから、『忙しいなか時間をつくってせっかく行ったのに…』なんて思うこともない。現場にとって、上司の勝手な都合など知ったことはないのだから」(61ページ)
迫さんがご指摘しておられるように、部下からの信頼を得るには、経営者が部下に敬意を持たなければならないということは、ほとんどの方が同意すると思います。しかし、「100%の敬意」を実践することは、頭で考えるほど容易ではなさそうです。迫さんは、お店で働いている従業員の方に会いに行っても、もし、お店が混んでいるなどして、従業員の方とお話できそうになかったときは、お話をせず、次のお店に向かうという姿勢をとっています。こういった判断は、ほとんどの方が、冷静なときは、至極当然のことと考えると思います。
でも、「社長」という肩書を持ってお店に行き、従業員の方と話しをできなかったとしたら、不満を口にしたり、口に出さなくても、不満そうな表情をしてしまう人の割合は高いのではないかと、私は考えています。正直なところ、私も、もし、迫さんの立場だったら、不満を口に出さなくても、不満そうな表情を出さずにすませることができるのかというと、ちょっと自信がありません。
したがって、今回、引用した迫さんのご指摘は、経営者の方が、それを実践できるかどうか、その意思の強さが問われるというものだと思います。繰り返しになりますが、「100%の敬意を100%形にする」ことは、頭では理解できることであっても、それを実践できるかどうかが問われるのであり、その結果がフォロワーの増えたのかどうかになって表れるということです。
2023/10/7 No.2488