鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

管理会計は経営判断に利用するツール

[要旨]

財務会計に基づいて作成される貸借対照表損益計算書は、会社の過去の営業成績を株主などに説明する目的で作成されます。一方、管理会計で作成される資料は、経営者が会社を存続させることを目的に、適切な判断を行うために利用するものです。


[本文]

経営コンサルタントの國貞克則さんのご著書、「財務3表一体理解法『管理会計』編」を拝読しました。國貞さんは、同署で、まず、管理会計とはどういうものなのかということについて述べておられます。「管理会計とは、そもそも何なのでしょうか?いろいろな団体や個人が管理会計を定義しようと試みていますが、管理会計にはいまだに統一された定義があるわけではありません。ただ、『管理会計』の英語である、“Management Accounting”という言葉が示すように、管理会計はマネジメントのための会計です。(中略)

マネジメントの第一の責任は、企業を存続させることです。事業の全プロセスをマネジメントして、企業を存続させなければならないのです。では、会計的にマネジメントすべき事業の全プロセスとは何でしょうか?それは(中略)、すべての企業に共通する、『お金を集める』→『投資する』→『利益をあげる』という、事業の全プロセスです。企業は利益をあげられなくなれば、倒産します。この事業の全プロセスをマネジメントして、利益をあげ続けなければまらないのです。

そして、この事業の全プロセスがPL・BS・CS(キャッシュフローステートメントキャッシュフロー計算書)という、財務3表で表されているのですから、財務3表を意識しながら、管理会計を学べば、管理会計の全体像と、基本的な考え方が、整理された形で理解できるのです。もちろん、管理会計は、企業の外部の情報も取り扱います。(中略)本書では、管理会計の目的を、『利益をあげ続けるための会計』とし、すべての企業に共通する、『お金を集める』→『投資する』→『利益をあげる』という、事業の全プロセスを会計的に説明している財務3表を意識しながら学んでいきます」(16ページ)

私も、管理会計について、國貞さんと同じように考えていますが、別の面から説明すると、もう少し理解が進むと思います。というのは、管理会計に対する対語である財務会計は、会社に資金を提供する人、すなわち、株主が利用する会計です。株主は、出資額に応じて会社から配当を受け取りますが、その配当の根拠が、財務会計によって作成される、貸借対照表損益計算書によって説明されます。要は、会計期間(ほとんどの会社は1年)の営業成績という「結果」を見るツールが財務会計ということです。

一方、管理会計は、國貞さんも「利益をあげ続けるための会計」と述べておられるように、将来を見通し、適切な事業活動を選択するためのツールです。このように、財務会計は過去を、管理会計は将来を分析するという、大きな違いがあります。また、財務会計は不特定多数の投資家が利用するため、統一された規則に従って作成されるものなので、「制度会計」と呼ばれることもあります。一方、管理会計は、その会社だけで利用するものなので、どれをを利用するか、どのように作成するかということは、会社の事業内容によって自由に定めることができるという違いもあります。

2024/4/30 No.2694