[要旨]
ミスターミニットの従業員は、ロジカルシンキングや戦略的思考が身についていないという短所がありますが、エリアマネージャーが持っていない現場感覚があるという長所があります。そこで、同社社長だった迫俊亮さんは、従業員の長所を活用してもらうことに注力し、同社の競争力を高めていったそうです。
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今回も、前回に引き続き、迫俊亮さんのご著書、「やる気を引き出し、人を動かすリーダーの現場力」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、迫さんがミスターミニットの社長時代、業績を回復させるためにはリーダーシップを強めなければならないので、さらに、そのために、従業員の方たち敬意を払うことに注力しました。その具体的な方法として、迫さんが店舗に行った時、混みあっていて従業員の方とお話できそうにないときは、お話をせず、別の店にいくということなどを通して、従業員の方への敬意を示していたということを説明しました。
これに続いて、迫さんは、組織の短所に注目するより、長所を伸ばした方が大切ということをご指摘しておられます。「組織も端緒に注目するより、長所を伸ばした方がインパクトは大きい。例えば、高校を卒業してそのままミスターミニットに入社して、現場で働く社員たちの多くは、エクセルやパワーポイントが使えない。いわゆるロジカルシンキングや戦略的思考も身についていない。これは、昇格させてリーダーになったときの『短所』になりえるだろう。だからといって、『昇格させるためには、エクセルやパワーポイント、ロジカルシンキングや戦略的思考を身につけさせる必要がある。たくさんの研修を用意しなければ…』と考える必要はない。
リーダー候補のエリアマネージャーには僕が逆立ちしても持ちえない現場感覚があるし、新サービスを任せるような社員には、並々ならぬサービス愛がある。すばらしい個性と長所があるわけだ。そんな彼らには、最低限のスキルを身につけてもらったら、後は、他の得意な社員にやってもらったり、思い切って外部に委託したりすればいい。(中略)短所に注目するリーダーは、自分も周りも疲れて行く。会社としても成長できないだろう。リーダーがすべきは、粗探しではない。足りないものに目を向けるのではなく、その人や組織のいちばん尖った部分を尖らせることこそが、リーダーの仕事だ」(64ページ)
迫さんがご指摘するように、経営者は、部下の長所に目を向ければ、部下からの信頼を得られるし、また、組織としての会社の能力も高まるということは、ほとんどの人が理解すると思います。しかし、このことを頭でわかっていても、人は、ついつい、他人の短所に目が向かってしまいがちです。ただ、人も組織も、長所と短所の両方があるわけですから、人や組織が活き活きと行動できるようにするためには、経営者は、短所ばかりに気をとられず、長所に目を向けることが得策と言えるでしょう。これについても、前回、説明したように、経営者は部下に敬意を払うことに注力しなければならないのと同様、部下の長所に目を向けることが、業績を高めるための近道であるということは述べるまでもありません。
2023/10/8 No.2489