鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『リーダーシップ』は人を導くスキル

[要旨]

経営コンサルタントの岩田松雄さんによれば、リーダーとは、フォロワーがいて存在する「ポジション」に過ぎません。一方、リーダーシップは、人を導くスキルであり、地位を得ることによって、自動的に発揮しうるものではなく、リーダー自らが習得すべきものだそうです。そして、これからは、リーダーシップは組織のトップだけのものではなく、全員がリーダーシップを発揮できる自走式の組織でないと生き抜いていけないということです。


[本文]

経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を拝読しました。まず、岩田さんは、「リーダー」と「リーダーシップ」の違いについて述べておられます。「そもそも、『リーダー』という言葉の定義は一体何でしょうか?英語のleaderは、日本語では、一般的に、『指導者』、『統率者』、『先導者』と訳され、人と地位を指します。

ドラッカーは、リーダーを、次のようにシンプルに定義しています。『リーダーに関する唯一の定義は、つき従うものがいるということである』この定義によると役職は関係なく、フォロワーがいて初めて、リーダーが成り立つことになります。(中略)では、『リーダーシップ』とはどう違うのでしょうか?一般的に、『リーダーシップ』は人を導くスキルを意味します。

リーダーシップとは、地位を得ることによって、自動的に発揮しうるものではなく、リーダー自らが習得すべきものです。だから、『リーダーシップのないリーダー』というのは、語彙矛盾ではなくて、実際に存在します。あなたの近くにもいるかもしれませんね。平社員が、リーダーではなくても、リーダーシップは発揮することができます。リーダーシップは組織のトップだけのものではなく、全員がリーダーシップを発揮できる自走式の組織でないと、これからの未来を生き抜いていけません。個々が場面場面でリーダーシップを発揮しなくてはならないのです。

また、リーダーとフォロワーの関係性において、従来の考え方で、リーダーが上で、フォロワーが下に位置するイメージ(例えば上司と部下)ですが、これからの共感型のリーダーは、フォロワーと対等な関係を目指します。場合によっては、リーダーとフォロワーが入れ替わったりすることもあります。サーバント・リーダーという考え方もありますが、これは、リーダーが下で、フォロワーが上にあるというニュアンスもあります」(45ページ)

「リーダー」と「リーダーシップ」の違いについては、あまり意識したことがない人は少なくないと思います。それは、日本では、長く、年功序列の時代が続いてきたからだと思います。すなわち、例えば、部長は部長としての権限を持っているので、部の中でその権限を発揮し、部員の人たちを指示を出したり命令したりすることができます。そこで、その権限をリーダーシップと考えてしまうことは、ある意味、当然と言えるでしょう。

そして、部長の権限は、部長というポジションに就くことによって、自動的に得られるものですから、リーダーとリーダーシップはセットになっていると考えられてしまうのかもしれません。ところが、松田さんは、「リーダーシップとは、地位を得ることによって、自動的に発揮しうるものではなく、リーダー自らが習得すべきスキル」と述べておられます。このように、リーダーシップはスキルであると考えれば、自らが習得しなければ身につけることができないものであるということになります。

でも、かつては、「リーダーとリーダーシップは違う」ということは、あまり議論されてきませんでした。ところが、松田さんも、「リーダーシップのないリーダーが存在する」と述べておられることからもわかるように、現在のリーダーは、十分なリーダーシップを持っていないと務めることが難しくなってきているのだと思います。これは、裏を返せば、かつては、部長があまりリーダーシップを持っていなくても、部長の権限があれば務めることができたのかもしれません。でも、いまはそれが許されなくなってきているのでしょう。

さらには、部長など、「組織図」にのっているリーダーでない人、すなわち、平社員であっても、リーダーシップというスキルが求められる時代になってきています。そうでなければ、岩田さんが述べておられるように、「リーダーシップは組織のトップだけのものではなく、全員がリーダーシップを発揮できる自走式の組織でないと、これからの未来を生き抜いていけな」くなってきているのだと思います。すなわち、リーダーシップは自ら習得しなければならないスキルであり、リーダーだけでなく、組織の構成員すべてに求められるようになってきていると考えることが大切です。

2024/4/5 No.2669