[要旨]
マッキンゼーでは、自分が自分の仕事のリーダーとなって仕事を進めます。したがって、組織図も、自分が中心にいる放射状の組織図になっています。このような体制をとることで、組織の構成員の多くがリーダーシップを発揮し、大きな成果につながります。
[本文]
前回に引き続き、今回も、伊賀泰代さんのご著書、「採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの」を読んで、私が気づいたことについて書きたいと思います。今回は、公式なリーダーではなく、組織の構成員の立場にいる場合は、どのようにリーダーシップを発揮すればよいのかということに関する、伊賀さんの説明をご紹介します。「(伊賀さんが、マッキンゼーに)入社してすぐの頃、先輩に教えられたことは、自分が中心に位置する放射線状の組織図でした。
通常の組織図は、上司が上、部下が下に置かれたピラミッド型の組織図ですが、この組織図は、マッキンゼーのチームには当てはまりません。マネジャーはパートナーの指示に沿って仕事をする人ではないし、各コンサルタントも、マネジャーから割り振られた仕事を担当する部下ではないからです。代わりに、常に意識しろと教えられたことは(中略)、『自分の仕事に関しては、自分がリーダーであり、パートナーやマネジャーを含めた関係者をどう使って成果を最大化するのか、それを考えることがあなたの仕事だ』ということです。
真ん中に位置する自分を舞台監督だとすれば、パートナーは主演男優、マネジャーは主演女優とも言えます。自分よりも彼らのほうが給与も高いし、知名度や立場も上かもしれません。それでも、『舞台をつくり上げ、成功させる』ことについて主導し、責任をとるべきは監督、すなわち自分である、ということです。だから、『上司をどう使うか考えることも、あなたの仕事だ』となるわけです」(147ページ)
日本では、リーダーと言えば、公式組織のリーダー(社長、部長、課長など)と考える人が多いと思いますが、マッキンゼーでは、プロジェクト(自分の仕事)ごとに、リーダーがいると考えているようです。確かに、プロジェクトごとにリーダーがいれば、リーダーシップを発揮する立場の人が多くなるので、そのような会社では、業績も高くなることは容易に理解できます。しかし、たくさんの人にリーダーシップを発揮してもらうようにするには、単に、リーダーのポジションを与えればよいということにはならないでしょう。
当然に、権限も委譲しなければ、「名ばかりリーダー」になってしまいます。さらに、より多くの構成員が、リーダーとして活動できるよう、育成もしなければならないでしょう。いま、組織の活性化をどのように行えばよいのかということについて悩んでいる経営者の方は多いと思いますが、それを実現するための対処法は、基本的には、組織の仕組みと人材の育成であると、私は伊賀さんの本を読んで感じました。
2022/6/22 No.2016