[要旨]
ビジネスの場では、決断すべきときに、失敗したときの責任を負いたくないという理由で、決断を先延ばししたり、決断を避けたりすることが、しばしば見られます。しかし、決断しないことは、何の学びも得られないことから、誤まることになったとしても、決断することは避けるべきではありません。
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前回に引き続き、今回も、伊賀泰代さんのご著書、「採用基準-地頭より論理的思考力より大切なもの」を読んで、私が気づいたことについて書きたいと思います。前回、伊賀さんは、組織の成果の達成を強く意識することがとリーダーシップに求められていると説明していることをご紹介しましたが、さらに、伊賀さんは、リーダーシップには、決断することが大切であるとも説明しています。
「ある、アメリカの会社の経営者が、会議の席上で、『A bad decision is better than no decision』と発言していたのを聞いた時は、その通りだと感じるとともに、それを経営トップが会議で公言することに驚きも覚えました。これはまさに、決めることがリーダーの責務であると理解している人の言葉です。『ベストな結論が見つかるまで検討を続けるべきだ』などと言っていては、お話になりません。
なぜ、ベストな決断でなくても、決めることが重要なのか、そのひとつの理由は、何かを決断すると、問題を浮かび上がらせることができるからです。(中略)リーダーが決断するときは、『これで万事がうまくいく』という結論が出た段階ではありません。問題は山積みですが、今が決断して前に進むべきタイミングであると考えて決断するのです。したがって、決断の後に問題が噴出することは想定内のことです」(126ページ)日本では、リーダーのポジションにあるにもかかわらず、決断できない人がいることは珍しくありません。
その理由は、決断した結果、それが失敗だったときの責任を取りたくないということもあると思いますが、それだけでなく、リーダーの決断は正しくなければならないという考えを持つ方が多いからだと思います。仮に、リーダーは正しい決断しかしてはならないのであれば、正しい決断ができるまで待つことをしたり、決断そのものを避けることの方が無難であることになるのは当然でしょう。でも、伊賀さんが米国の経営者の方から聞いたとおり、「間違った決断は、決断しないことに優る」ということが、ビジネスパーソンとしては正しい考え方でしょう。
確かに、誤った決断をした結果、失敗したとしても、決断しなかった結果、失敗したとしても、どちらも同じ失敗に見えます。でも、誤った決断であったとしても、決断が行われた場合、その後の組織の活動は能動的に行なわれることになり、決断をしなかったときよりも多くの学びがあります。そして、その後の活動においても、決断をしなかったときよりも、失敗の経験が活きることになります。このことは、広く理解されていることとは思いますが、決断できない経営者の方も、依然、少なくないと思います。
2022/6/21 No.2015