鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

パートナー・リーダーシップ

[要旨]

パートナー・リーダーシップとは、どちらがリーダーで、どちらがフォロワーか、その時々によって、阿吽の呼吸でその役割が入れ替わるようなリーダーシップスタイルです。このようなリーダーシップが発揮されることで、役員や従業員の個々の得意分野を活かせるだけでなく、能動的、かつ、効率的な活動が促されます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、米国のリーダーシップの研究者のマッコールは、「リーダーシップは生まれつきのものではなく、いくつかの資質の下で、成功や失敗を経験して体得して行くもの」という説を立てており、経営者の方が従業員にリーダーシップを習得して欲しいと考える場合は、成功や失敗を経験させる機会を与えることが求められていることになるということについて説明しました。

これに続いて、岩田さんは、パートナー・リーダーシップについて述べておられます。「組織が順調にいっている時の理想的な上司・部下の関係のリーダーシップは、パートナーシップです。どちらがリーダーで、どちらがフォロワーか、その時々によって、阿吽の呼吸でその役割が入れ替わるようなリーダーシップスタイルです。

30年連れ添った夫婦のように、共通の目標に向かって協力する2人が信頼関係で結ばれている時、リーダーとその部下は、相互に影響し合う機会に恵まれています。そのとき手掛けている仕事の内容、それを処理する能力、仕事への意欲に応じて、リーダーシップは両者の間を行ったり来たりします。仕事をどのように進めていくかを決めるにあたって、両者が得意な部分でリーダーの役割を果たす。つまり、リーダーとフォロワーでリーダーシップを分け合うのです。まさしく組織が安定している時には、共感型のリーダーの理想的な姿です。

例えば、ホンダの創業者の本田宗一郎(技術)さんと藤沢武夫(経営)さん、ソフトバンク孫正義(ビジョン)会長と宮内謙(経営実務)副社長、あるいはスターバックスハワード・シュルツマーケティングの天才)、ハワード・ビーハー(高い人間性)、オーリン・スミス(財務のプロ)の3人の関係性かもしれません。お互いの強みを活かせるよう、そして、弱みを補い合える関係性を築いていたと思います。もちろん、表に出てくるのはトップだけですが、実際はメンバー間でリーダーシップを分け合っていたので、大成功したのだと思います」(103ページ)

私は、従業員の方に対し、リーダーシップを習得してもらうようにすることが大切だと思うのは、岩田さんがご指摘しておられるように、リーダー(上司)とフォロワー(部下)の間で、「リーダーシップを分け合う」ことが可能だからです。こうすることで、役員や従業員の個々の得意分野を活かせるだけでなく、能動的、かつ、効率的な活動が促されます。ちなみに、念のために言及すると、「リーダーシップを習得させること」と、「リーダーを育成すること」は異なりますので、混同されないようご注意ください。

話しを戻して、岩田さんがご指摘しておられるように、ホンダ、ソフトバンクスターバックスのように、複数の役員がリーダーシップを発揮している会社は、業績も高いということが、容易に理解できます。それは、繰り返しになりますが、複数の役員が、それぞれの得意分野で能力を発揮できるためです。ところが、直接的な根拠を示すことはできませんが、私がこれまで多くの中小企業をお手伝いしてきた経験から感じることは、複数の役員がいるとき、中互いしてしまうことが多いということです。それは、1つの組織の中で、複数の人がリーダーシップを発揮してしまうと、それは、お互いに対立する存在になってしまうことの方が多いということです。

もちろん、ホンダやソフトバンクのように、複数の役員がうまく協力している会社はあるものの、協力し合う役員が成熟していないと、その効果を発揮できるようになることは難しいと、私は考えています。とはいえ、岩田さんのご指摘しておられるような、パートナー・リーダーシップが発揮できるような組織を目指すことは大切だと思いますが、そのためには、単に、異なる得意分野を持つ人が集まるだけでよいということではなく、お互いの目指す会社の理想像を、よく理解し合っておいたり、お互いを尊重する関係を構築したりすることが鍵になると、私は考えています。

2024/4/11 No.2675