[要旨]
危機的状況や組織変革の時は、リーダーは、強いリーダーシップを発揮することが必要ですが、変革が進み、組織が自走し始めたら、強いトップダウンから、支援やコーチング的なリーダーシップスタイルに変えていくことも必要であり、このようなリーダーシップをサーバント・リーダーシップといいます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「共感型リーダー-まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、シェアード・リーダーシップは、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有している組織の状態で、環境が変化しやすい時代に向いているものであることから、これをを採り入れると、チーム全体のモチベーションが向上するだけでなく、プロジェクトを円滑に進行させることができ、チーム全体のパフォーマンスを高めることができるということについて説明しました。
これに続いて、岩田さんは、サーバント・リーダーシップについて述べておられます。「危機的状況や組織変革の時は、リーダーは、強いリーダーシップを発揮することが必要ですが、変革が進み、組織が自走し始めたら、強いトップダウンから、支援やコーチング的なリーダーシップスタイルに変えていくことも必要です。これが、いわゆるサーバント・リーダーシップです。(中略)サーバント・リーダーシップという言葉から、常にメンバーに言われるがままに尽くすのだという誤解が生じやすくなってしまいます。
サーバント・リーダーといえども、しっかり方向性(ビジョン)を定めないといけません。サーバント・リーダーも魅力的でエキサイティングなビジョンを掲げ、それを皆に浸透するまで繰り返し、繰り返し伝え続ける必要があります。ビジョンを示せないサーバント・リーダーは、ただのサーバント(召使い)になってしまいます。日本の管理職に多いのはこのタイプです。『人の良いおっちゃん』ではダメです。サーバント・リーダーは、リーダーとして方向性(ビジョン)を示しながら、実際にその実行にあたっては、サーバントになるのです。部下の目標達成を助けるのが、自分の役割と考えています。どうすれば部下が成功できるのかと、絶えず考えています。
共感を得るサーバント・リーダーになるためには、『謙虚さ』を持つことが必要です。『ビジョナリー・カンパニー2』の中で述べられている『第5水準のリーダー』も、サーバント・リーダーの特質を備えています。ビジョンを達成するための強い意思を持ちつつも、とても謙虚なリーダーです。うまく行けば、窓の外を見て、メンバーのお陰だと感謝し、うまくいかなかったら、鏡を見て自分の力が足りなかったことを反省します。実際には、この反対で、あまりに多くのリーダーが、地位や権力を私物化して勘違いしています」(106ページ)
本旨から外れますが、岩田さんもご指摘しておられるように、本当は、「部下の手柄は部下のもの、部下の失敗は上司の責任」と考えなければならないところを、「部下の手柄は自分のもの、部下の失敗は部下の責任」と考える上司がたくさんいるという現実は、私も実感しています。リーダーシップについて考える前に、部下の失敗を部下の責任にするだけでよいのなら、上司は何の役割も果たしていないということになるのですが、意外とそれを理解していない方は多いようです。話しを戻すと、岩田さんは、サーバント・リーダーシップに関し、ネルソン・マンデラの次の言葉を引用しています。
「リーダーとは、羊飼いのようなものであり、最も機転のきくものに戦闘を歩かせ、残りのものをそれに従わせ、リーダーは群れの一番後ろにいる。誰も後ろから導かれていることに気づかない。ただ、何か危機が起こったときには、リーダーが先頭に立ち、リードする必要がある」私も、理想的なリーダーとは、「誰も後ろから導かれていることに気づかない」ようなリーダーだと思っています。なぜなら、その方が、メンバーがすべての能力を発揮できるからです。だから、第5水準のリーダーがいる会社の業績は、最も高くなるのだと思います。
2024/4/13 No.2677